以下、一応、「演劇エキスポ」のレポートとして、犯罪友の会のレビューを書いてみよう、ということにする。
犯友の傑作『白蓮の針』が「演劇エキスポ」のために上演された。これまでも何度となく上演されてきた作品なのだが、現在のフルキャスト・ヴァージョンでの再演となる。この1本を見ると、武田一度さんがどれだけ凄い作家なのかが一目でわかる。これは彼の持つすべてのエッセンスがぐぐっと凝縮された作品なのだ。シンプルだから、美しく、力強く、切ない。もちろん、これをウイングフィールドで上演することに意味がある。ここと、野外劇場という2つの空間を自由自在に行き来して、壮大かつ繊細、大胆な作品を作るのが、今の犯友で、この作品で初めてこの集団と出会った人は、9月の野外劇を必ず見なくてはならない。そうすることで、あなたは本当の意味で犯友と出逢える、ことになる。
武田一度さんが今回の「演劇エキスポ」の目玉作品として(これは映画祭なら特別招待作品の扱いだろう)これを持って参加されたことは、もっと、もっと大々的に宣伝されるべきだったのではないか、と思う。今まで小劇場演劇のファンと言いながら、犯友を見てこなかった人たちが(そんな人がいるとは思わないけど)初めてこの作品と対面した時の驚きを出来ることなら聞かせて欲しい、と思う。僕はもう30年以上前から犯友を見ているし(もちろん、その頃は毎回維新派だって見ていた)今も見ているから、あまり驚かないけど、今回久々に前のほうの席でこの作品を見て、改めて小劇場演劇の魅力というものを、そしてこの作品の持つエネルギーを実感させられた。客席とに近さがこれだけのスペクタクルとなる。大仰な仕掛けなんかいらないということを実感させられる。
役者が内に秘めたエネルギーをその全身に漲らせる瞬間の圧倒的迫力。中田彩葉の独り語りのシーンに目が釘付けになる。そして、終盤、船の遭難シーンで、広い舞台でもんどり打つ彼女の姿。大海でおんぼろ船を襲う嵐のスペクタクルを体ひとつで体現する。これこそが小劇場の芝居の醍醐味なのだろう。それをぜひ、若い演劇ファンの見てもらいたい、と思った。
と、こんなふうに書きながら、なんだか、これは誰に向けて書いてるのやら、わけがわからなくなってきた。要するに、この演劇祭が、「犯友再発見」ということを提示しようとしたのか、ということを、共通パンフを見て、僕がなんとなく感じた、というだけの話なのだ。そして、そういうラインに沿ってこの一文を書こうとしたのであったんだけどなぁ。なんだか、微妙。