この映画の予告編を何度も見て(シネリーブル梅田にばかり行っているからね)気分が悪くなった。なんなんだ、これは、と。
『四谷怪談』のお岩さんのような女性が登場する。薬を飲んで顔が崩れてきたようだが、自分で進んで飲んだところが騙されて飲んだお岩さんとは違う。彼女の行為はどこまでもエスカレートしていく。
そんな女性が主人公。承認欲求が異常に高い。盗人アーチスト(あり得ない! 彼は盗品を使って作品を作る、みたい)の恋人がいるが、こいつも同じ。オレオレで、自意識過剰。自分のことしか考えない。そんなふたりの話。
彼女は自分から体に異常が出ることを承知でやばい薬を過剰摂取して、顔が崩れてくる。それを売りにして、モデルになる。こんなアホな話で映画は成り立つ。ラストは「生きたい」とかほざくが、いいかげんして欲しい。こんな無茶苦茶な話が映画になり、不愉快だけどラストまで、なんとなく見せきる。
たいした映画ではないけど、こんな大胆な映画はなかなかないからこれはこれで見ものだった。行くか行かないか、かなり悩んだけど、見て正解だった。振り切った映画ではなく、ギリギリで、立ち止まる。最後に理性を取り戻す。それがいいという訳じゃないけど、映画がここで暴走を抑えてくれてよかった。めちゃくちゃはつまらない。それはただの絵空事でしかないからだ。
バカな女の暴走の果てに見た風景は、この97分の悪夢から僕たちをしっかり帰還させてくれる。この映画は実に破天荒な体験だった。