ノンフィクションライター菅野久美子によるエッセイ風レポート。読みやすい本だ。だが、重くて暗い。そして僕たちはここから目を背けれない。評論家の上から目線ではなく、そこで暮らす我々と同じ目線から現実と向き合う。いや、最底辺に陥った人たちと寄り添うところから始める。
タイトル通り生きづらさの時代を生きるための指針が示される。彼女の実体験をベースにして、そこから彼女自身もまたそこから立ち上がっていく、そんな姿がさりげなく示される。自分の親を「毒親」だったと切り捨てる覚悟を描くエピソードからスタートして実体験を赤裸々に語り、そこを切り口にして現代日本社会の問題点を描く。よくある啓蒙本ではない。
我々が生きる時代のさまざまな問題と向き合い、安易な安心を引き出すのではなく、悲惨な現実から目を逸らすことなく、真摯に向き合って受け止めていく。セルフネグレクトを中心に据え、孤独死をテーマにして執筆をする。特殊清掃員と同行して、孤独死の現場から見えるものを発信する。自分の足で掴み取った現実を大事にして、考える。どうすればこの社会をよくできるのか、と。
読んでいてかなりつらいと感じるが、読み続けてしまう。この先にあるものから目を背けることはできないからだ。これは僕たちの生きるこの世界の現実なのだから。