塩田明彦が原作・脚本・監督を手掛けた新作。これまた奇想天外な話で、こんなのが映画になるのか、と呆れる。だけど、映画はかなり面白い。無茶苦茶だけど、最後まで引き込まれていく。『シック・オブ・マイセルフ』と違ってこちらは、不快ではない。春画の先生に引き込まれていく女性の話。こんな話なのに、なんだか爽快。
春画の世界は淫靡なエロではなく、あっけらかんとした性の開放。そこでは人間が人間らしく生きている。だからこれはエロ映画ではないけど、変な芸術映画でもない。おおらかな性の世界。恋愛映画みたいだが、これを恋愛ものだとは思えない。なんだかわけのわからない世界に迷い込んでしまったって感じ。
ヒロインの北香那が素晴らしい。春画の世界に引き込まれて先生を好きになり、どこまでもついていく。ポルノ映画みたいな話なのに、明るくて、楽しい。終盤にまさかのSMまであるけど、下品にはならないとこで収めた。
理解不可能なストーリーだが、納得する。理屈じゃないからだ。彼女は春画先生に春画の世界に誘われて、わけのわからない体験をする。エロではなく芸術ってなんだかなぁと思う。これは学問を極める学術映画なのだ、なぁんて。おおらかで開放的な春画ワールドに導いてくれる塩田明彦監督はデビュー作『月光の囁き』の頃に戻って、爽やかに変態。