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映画・演劇のレビュー

『空へ 救いの翼』

2008-11-28 21:58:03 | 映画
 手塚昌明監督の新作である。彼の『ゴジラXメカゴジラ』は平成ゴジラシリーズの最高傑作であるだけでなく、ゴジラシリーズで唯一の人間が主人公の映画でもある。釈由美子扮するGフォースの女性がメカゴジラに搭乗してゴジラと戦う。さらにはそれだけでなく、あの映画は自衛隊をここまでかっこよく描いた映画はかってなかったのではないか、と思わせるくらいに見事に描いていた。

 そんな彼が再び女性自衛官を主人公にした映画を撮ったのが本作だ。それにしても手塚監督は実に全作品で自衛隊を描き続けている。前作である『戦国自衛隊』も当然だが、今回は完全に自衛隊の宣伝映画と見まがうばかりだ。

 正直言って彼のゴジラ2作品と比較すると前作も本作もなんだかつまらない。それはゴジラという戦う相手がいないからだけなのか。それにしても、単純な設定の中で、メリハリをつけて見せた『ゴジラXメカゴジラ』の感動は何だったのだろうか。あの映画はただひたすら釈が命がけで戦う姿のみを描いていた。男たちの中でひとり戦う女性の美しさは見ていて惚れ惚れするようだった。釈由美子があんなにも凛々しい。あれは『修羅雪姫』と並ぶ彼女のすべての仕事のピークではないか。あれ以降、彼女が輝くような映画はない。

 今回の映画の何が悪いのかと言うと、まずヒロイン(新人の高山侑子)がまるで魅力的ではないことに尽きる。話自体も単調で、ただ救助活動を串団子にしてつないだだけ。クライマックスも何もない。何がしたくてこんな映画を作ったのか、よくわからない。大森一樹をはじめとした脚本チームはまるでやる気のない仕事をした。これでは手塚監督が可哀想だ。(まぁ、本人も脚本にはタッチしているからしかたないか)

 試写で見たお正月公開の映画をくさすのは、気が引けるが(しかもあの手塚監督の新作だし)嘘を書いても仕方ない。なんと2週間ぶりに劇場で見た映画がこれではがっかりだ。

 

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