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映画・演劇のレビュー

『ホビット 思いがけない冒険』

2012-12-18 23:01:39 | 映画
 『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の前日譚。これをまた3部作スタイルで映画化するという壮大なプロジェクトの第1作。しかし、どう考えてもこれが前3部作を超える作品になる、という気がしない。スケールが小さすぎる。だいたいこのタイトル。そこからして、もう前作に負けている。『思いがけない冒険』なんていうサブタイトルの映画を誰が見たいと思うだろうか。それにタイトルも『ホビット』である。これでは『ロード・オブ・ザ・リング』のスピンオフにしか見えないし、実際にもその通りなのだ。

 フロド(イライジャ・ウッド)の旅を描いた前作の前には、実はフロドの養父ビルボが、指輪を手にするまでのお話があった、とかいうのが、この作品なのだが、それがどうした、と思う。もっと意外なお話を用意してもらわなくては、普通は興味をそそられないのではないか。

 臆病者のビルボが、魔法使いのガンダルフから旅に誘われて、ついていくことになる。そこには次から次へとすごい冒険が待っている、というまぁ、おきまりのパターンで、3時間もの大作として見せていくのだが、いくら驚愕のビジュアルを見せようとも、お話自体がここまで単調ではつまらない。これではまるで乗れない。しかも、例によって3Dである。今までの3Dとはまるで違う新技術が導入されているらしいから、ぜひ3Dで見よう、とか、宣伝されていたような気がしたから、3Dで見たのだが、相変わらずのこけおどしでしかなく、こんなこと、スピルバーグなら、もっとすごいことを2Dで散々やっている。『インディージョーンズ 魔宮の伝説』のトロッコのシーンなんか、ほんとうにハラハラドキドキしたし。

 ピーター・ジャクソンは『キングコング』と『ロード・オブ・ザ・リング』を経て力尽きてしまったとしか思えない。新しい冒険に出ることもなく、こんなチマチマした『ロード・オブ・ザ・リング』の残り滓で、遊んでいていいのか、と叱ってやりたい。こんなことをしている暇があるのなら、『乙女の祈り』に戻って低予算のホラー映画でも作ったほうがずっと建設的じゃないか、と思う。まぁ、本当は、本当の初心に戻って『ブレインデッド』みたいな映画を大予算で作ってくれたなら面白いのだが、無理だな、それは。


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