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映画・演劇のレビュー

小野寺 史宜『タクジョ!みんなのみち』他

2023-01-16 18:38:34 | その他

小野寺 史宜『タクジョ!みんなのみち』は『タクジョ!』の続編。今回は6話からなる連作で6人のタクシードライバーたちのそれぞれの一日が描かれていく。4月から始まり9月までの六日。タクジョだけどタクダン(なんて言うのか? 言わんわな)も交えて交互で男女各3人の視点からのエピソード。読みやすくて楽しいお仕事小説だ。女性タクシードライバーでしかも若い女性という設定。珍しいからいろいろ大変なこともある。もちろん男性だって、若くない人だって、それぞれいろんな悩みや問題は抱えているだろう。だから今回は6つのお話で男女関係なく世代も多岐にわたりそれぞれの問題が浮き彫りにされてくのはタクジョじゃないけど、みんなでいいやん、という感じでなんだかタイトルに偽りありでいささかいいかげんだけど、そういうアバウトさは僕は嫌いじゃない。

小路幸也の『素晴らしき国』は27日公開の東映70周年記念映画『レジェンド&バタフライ』と同じで信長と濃姫の物語のようだ。2作を比べると面白いかも。そこに今年の大河『どうする家康』もキャラクターは重なるから加えてもいい。冒頭のちょうのエピソードを読んでいて、気付く。というか、「序」でも軽く触れられてはいる。それにしても小路幸也が時代劇を書くなんて初めてではないか。彼としては短い200ページほどの小説で、オチはどこに行きつくのか、この先どんな話になるのか、とドキドキしながら読み始めたが、途中からこのペースで200ページはないよな、と思い始める。案の定、お話は助走(序章)だけでいきなり終わる。2巻に続く、という感じだ。それにしても唐突な終わり方だ。このペースなら10冊くらい続きそう。信長なんてまだ登場すらしていないし。SF的設定で現代から始まり、フジミ(不死身)なんていうずっと生き続ける女が語る「素晴らしき国」誕生から現在までの歴史も面白い。彼女が夢見た「素晴らしき国」がここからどういうふうに描かれるのか、気になる。明智光秀と信長の関係、濃姫と信長の関係もどう描かれるのか。さらには戦国時代から江戸時代までで終わるのか、それ以降もあるのか。ここまでではまるでわからない。ただ、いくらなんでもここで終わるのはなんだかなぁ、である。

新人作家の小説では日比野コレコという20歳くらいの女性のデビュー作(文藝新人賞受賞作)が衝撃的。3人(ナナ、静、ビルE)の高校3年生男女が語る自分たちのモノローグ。その内容が過激すぎて驚く。それをさらりと語るのもなんだかリアル。お話というよりドキュメント。生々しい。ただ、後半慣れてきて単調になる。ストーリーとそこからの展開が欲しい。「ことばぁ」という老婆の存在や、静とビルEをつなぐダイとか、キーマンになる存在を3人の話に絡ませて小説なんだからなんらかの決着をつけて欲しい。


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