最近港映画付いている。昨年の傑作ドキュメンタリー2作品を経て、今年『理大囲城』からスタートして『七人樂隊』経由でここに至る。逃亡犯条例からカンフー映画まで遡った。僕だけではなくほとんどの日本人の香港映画との出会いはブルース・リーだろう。74年のお正月映画として公開された『燃えよドラゴン』(アメリカ映画だけど)の衝撃。そこから続く怒濤のブルース旧作ラッシュ。すさまじい量の香港カンフー映画が日本に上陸した。そして、ジャッキー・チェンの登場だ。70年代後半から80年代にかけて、日本での香港映画の隆盛は極まる。
映画はサモ・ハンのインタビューから始まるが、この映画はあの時代を支えたスターにスポットを当てたものではない。スターの陰に隠れたスタントマンたちの姿を描くドキュメンタリー映画だ。香港カンフー映画、あそこに描かれた恐るべきアクションはどういうふうにして作られたのかが明かされる。
彼らは命を削るアクションをこなしていく。あの時代を潜り抜けてきた今では老人になったスタントマンたちの談話が胸に突き刺さる。スターの影で辛酸をなめた秘話ではない。自分たちの限界に向けて挑戦した栄光の日々を回顧する。何が彼らをここまで突き動かしたのか。あの有名な『プロジェクトA』の落下シーン。ジャッキーの前にスタントマンが演じて死ななかったからジャッキーが演じた(というか、あれは演技ではないし)という逸話とアーカイブ映像。スタントマンたちの証言に、スターたちの証言や監督たちによる証言が寄せられる。だが、この映画はあくまでもスタントマンが主役だ。
だが、それも今ではもう過去の話になった。でも、終盤、今も若い人たちの指導に当たる彼らの姿が描かれる。その薫陶を受ける若者たちの姿も眩しい。過去の栄光、過ぎ去りし日の輝きを辿る映画にも見える。なんだか寂しい気もする。時代は流れて今ではもうあんな映画は作られない。隆盛を極めたゴールデンハーベストも今はもうない。確実に作る映画はいつも大ヒットしたジャッキー映画も21世紀に入ると陰りを見せ、やがて今では途切れた。年齢的な問題だけではないだろう。ドニー・イエンの映画は今でも細々公開されるけど日本では話題にもならない。膨大な予算をかけて作られる中国映画のアクション大作はCGだらけで、つまらないものばかりだ。確かにもうあんな時代ではないのだが、香港映画の明りが消えていくようでなんだか寂しい。