ここまでバカバカしい映画がかってあっただろうか? しかも、それが息切れすることなくラストまでなんとか持続するのだ。107分という微妙な上映時間がたぶん限界だろう。アイデア勝負の作品にとって100分の壁は大きい。立ちはだかるその壁を乗り切ることは困難を極める。先日の『ゴクドルズ』がそうだった。案の定、すぐに息切れして悲惨な映画になるしかなかった。87分なのに討ち死にした。当然だろう。アイデアを生かし切ることなく、発想の面白さだけで終わる。お話として膨らませる努力がないから、つまらない映画にしかならない。こういう企画で2時間の映画を作ろうとしたらたぶん失敗する。そこを監督の竹内英樹はよく理解している。壮大なお話でそこをしょぼく見せるとうんざりする。それなりの大予算が必要だ。しかし大味な大作仕様はダメだ。いろんな足枷をクリアしなくては成功しない。これは『テルマエ・ロマエ』2部作の実績があったからこそできた仕事だろう。素晴らしく、バカバカしい。
迫害される埼玉が、最終的には千葉と連合を組んで悪の巣窟、東京を倒して、さらには日本を征服する。その先に世界を見据える、というまるで戦争映画のような図式が用意される。でも、もちろんこれは戦争映画なんかではない。そのバカバカしい展開も含めて実に際どい。ギリギリでセーフというところで、綱渡りしていく。二階堂みほとGACKTが主演する、というとこからしてまず大胆で作り手の覚悟がしっかり伝わる。女の子に少年を演じさせることと、年齢不詳の中年男性に高校生を演じさせるというバカバカしさを正気の沙汰としてまず提示して、それどころか、この2人が基準となり、世界が作られていく。彼らにリアリティがあるから、その先にある異常な世界はすべてちゃんと理解させることが可能となる。これはそんな凄い計算の上に成り立つ映画なのだ。荒唐無稽がどこまでエスカレートしようとも、彼らがバランスシートとなり、それを納得させる。もちろんそれに見合うだけのビジュアルの提示が出来ているから、しらけることなく見ていられるのだが。観客がアホらしい、と思った瞬間にすべてはぶちこわしになる。取り扱いはかなり危険な映画なのだ。
クライマックスの埼玉VS千葉の戦いも見応えがあるが、その後の東京都庁でのバトルも凄い。どこまでもエスカレートしていく。悪ふざけではなく、映画は終盤どんどん加速がついて、ラストのエンドロールだけではなく、マーベル映画のようなその後も、実の面白いオチがつく。細部に関しては見てもらえばいいと思うけど、こういう危険な題材を扱い、最後まで息切れすることなく、(もう息絶え絶えで、だけど)ゴールインした奇跡を確認してもらいたい。