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映画・演劇のレビュー

犬鍋ネットワーク『先生、あのね』

2013-04-02 20:20:14 | 演劇
 前回の『GET UP村』もこんな感じだった。決して悪くはないのだ。だから今回だってまた見てしまう。でも、やはり、がっかりする。作者は、自分の発想のおもしろさを信じきれてない。だから、そのまま、安易にゆるくて甘い作品にして終わり。せめて上演時間を90分にしたなら、もっと考えて作れるのに、60分というお気楽な長さを選択することで、大切なものがみんな抜け落ちてしまうのだ。この手のアイデア勝負の作品はディテールを生かすことで、凄いものになる可能性は十分にある。次こそは傑作を作り上げて欲しい。

 中学の3年間、ずっと好きだった先生に卒業式の後、告白する。彼女がいたからとても楽しい中学時代だった。いろんなイベントがあった。そこにはいつも大好きな先生がいた。だからすべてが楽しかった。恥ずかしくて言えなかった本当の気持ちを今日伝える。

 だが、もちろん断られる。10年経って、立派な大人の男になったら、もう一度告白するという決心をする。そして10年。この芝居は、再母校である中学を訪れ、先生にアタックする彼のけなげな姿を描く。彼は先生に無事会えるのか。10年振りの中学。だが、先生はもういない。彼の変わらない想いは先生に届くのか。

 お芝居は、10年後のその日を描くノンストップバトルである。彼の前に立ちはだかる不条理な数々の障害、それを乗り越えて25歳になった彼は、先生のもとへと猛突進する。このばかばかしい話が、いいかげんで、あほらしい、よく言うと、シュールなイメージで、怒濤の展開をしていく。この悪夢のようなお話は見せ方次第では、凄いナンセンスコメディーにすらなりそうな勢いなのだが、作り手は自分たちの発想の凄さに気付いていない。せっかくのアイデアを生かしきれないままで終わらせた。本当に惜しい。

 ラストのドン引きするようなオチ(先生はもう50歳くらいの年齢で、そんなことにも気付いてなかった、とかいうオチ)も含めて、とてもアイデアはうまいと思うのだ。なのに、それを生かしきれていないから、ただの小話コントにしかならない。これは壮大なドラマを秘めた企画なのに、もったいない。


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