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映画・演劇のレビュー

『007 スカイフォール 』

2012-12-02 08:19:03 | 映画
 公開初日の朝一番で劇場に行くなんて何十年振りのことだろうか。それくらいに早く見たかった、というわけではない。期末テストの直前なので、土日にクラブがないからだ。しかも映画の日だし。それで映画館に行くことにした。それがちょうどこの映画の初日になったというだけの話なのだ。でも、なんだか気持ちがいい。お正月一番の大作アクション映画を、誰よりも早く(まぁ、試写会で見ている人は多数あるのだろうが)、まず最初に見れるなんて、僥倖だ。

 007を初めて劇場で見たのは、高校生の頃だ。『黄金銃を持つ男』である。忘れもしない。今考えるとつまらない作品なのだろうが、劇場の大スクリーンで見る007は最高だった。ロジャー・ムーアがボンドだった。悪役の名前はスカラマンガ! そんなことまで覚えている。クリストファー・リーが演じた。パンフも主題歌のサントラも持っている。あの頃はそんな時代だった。1本の映画を見たら1カ月でも2カ月でもそれを楽しめた。今は見た瞬間に忘れている。あの頃はそれだけでロジャー・ムーアのファンになったし、『ゴールド』なんていうパニック映画も見た。今ではあり得ないことだ。その後も何本もロジャー・ムーアのへぼいアクションを楽しんだ。映画としてはつまらない派手なだけの娯楽大作で、でもファミリーピクチャーとしては楽しめる。宇宙にまでいった作品もある。

 あれからもう少しで40年になる。007も50周年を迎える。23作目。ダニエル・クレイグになって、これが3作目だ。だが時代は変わった。もうこういうタイプのスパイ映画にはリアリティーはない。それでも、敢えて、悪あがきする。今のリアルを盛り込んだ結構ハードなアクション大作をここに求める。今回は監督になんと『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデスを呼んできた。シリアスな人間ドラマも盛り込もうという欲張りな作品なのだ。

 それにしてもいつもにも増してオープニングのアクションが凄い。もうこれだけで芸術作品だ。しかも、長い。(20分くらいあったのではないか?)1本の映画分のアイデァと予算ををそこに盛り込んだ。だから、あれだけで十分満足できるほどだ。その後の2時間はおまけでしかない。そんな感じ。でも、それってまずくないか。

 それでも、ハビエル・バリデムが登場するまでは、話の先が読めないし、どこに向かうのかと、ドキドキさせられる。特に上海シーンまで、スリリングだ。だが、彼が登場してきてからは彼の個性が強すぎて、映画は彼の独壇場となり、007でなくなる。あんなにも個性的なキャラクターは良し悪しだろう。まるで『ノーカントリー』みたくなる。しかも、ラストのクライマックスシークエンスは、なんかダニエルの『カウボーイ&エイリアン』見たいで、まるで007じゃない。というか、やはり今時007という企画自体が不可能な時代となってしまった、ということか。ダニエル・クレイグになってから、原点帰りを図り、もともとのハードで洗練された007の雰囲気を取り戻そうと努力しているのだが、サム・メンデスを持ってきてもそれは難しいようだ。

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