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映画・演劇のレビュー

演劇集団よろずや『義朝記』

2012-11-30 22:21:45 | 演劇
 8年振りの再演となる。再演が続くよろずやだが、(この後も『バイバイ』の再演が来年にある)この作品は、前回のリベンジであり、キャパ400規模の劇場(八尾プリズン小ホール)での上演は、この作品に賭ける寺田さんの想いがこめられてあり、これはぜひとも目撃してみたかった。

 この作品はこれくらいの大きさのホールでの上演が望ましい。前回の創造館での上演が失敗だった、というわけではない。あれはあれでとても立派な作品だった。だが、この作品の持つスケールを表現し切れなかったという恨みが残った。もちろん大きな空間で上演したならスケールが伝わるというわけではない。そんな単純な問題ではないことは明白だ。だが、この作品の持つスケールは小劇場仕様ではないことも事実なのだ。

 だが、このサイズの劇場での上演に耐え得るだけの力量が役者にあるか、ということ、そして、何よりもこのサイズの劇場でこんなにも静かな作品を見せきるだけの演出力が寺田さんにあるのか、ということも、とても気になった点だ。いろんな意味で、これは実はかなり困難で、難しい挑戦なのである。

 この台本の持つ魅力は、ギリシャ悲劇や、シェークスピアの悲劇を見ているような骨太なタッチであるにもかかわらず、とても繊細なドラマであり、それを静かなタッチで見せていくところに難しさがある。スケールの大きさと細やかさを同居させてこの悲劇を見せることが出来たなら、この作品を成功に導くはずだ。寺田さんは豪快さを抑えて見せていく。歴史ものの定石や、時代劇ならではの派手な殺陣とかは最小限にして、人間ドラマの方に焦点を絞り込む。それは前回と同じだ。ただ、そうしても作品の持つスケールは損なわないのがすばらしい。主人公の義朝を演じた早川丈二(初演に続いての続投だ。彼なくしてこの作品は成立しない。もちろん、父親役の菊谷高広も、だが)が素晴らしい。彼の存在がこの悲劇を見事に成立させた、といっても過言ではあるまい。とても立派な作品に仕上がった。なんだかほっとした。



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