実話の映画化なのだけど、このはちゃめちゃぶりには驚かされる。プロレスにすべてをかける家族のお話。よくあるスポコンものなのだけど、安心して見ていられる。こんな嘘くさいお話なのに、実話というのがいい。エンディングで紹介されるモデルとなった家族の肖像(写真で紹介されていく)が、映画の家族そっくり(まぁ、モデルとなんてるのだから、あたりまえでしょうが)で、笑える。ドキュメンタリータッチの映画ではない。絵にかいたようなお話で、主人公の女の子や、彼女の兄のお話、両親の描写も、とても嘘くさいくらいにベタなお話。だけど、それがとてもここちよい。
それはここには嘘がないからだ。たった4人でプロレス興行をして生計を立てる。プロレスいのち、って感じの両親は、そんな生活を楽しんでいる。弱小団体だけど、それなりにファンを集めている。レスリング教室に通う子供たちもいる。兄は子供たちにレスリングを教えながら、くすぶっている。今の自分にいじけている。妹はアメリカに行き、世界最大のプロレスリーグに入って、スターを目指して頑張っているのに、自分は、こんなところで何をしてるんだ、というのが彼の今の想いだ。ふたりのお話を並行して描いていく。
分かりやすいサクセスストーリーでもあるけど、イギリス北部のちいさな町を舞台にした生活の記録でもある。彼らの毎日をきちんと見せてくれるのがいい。子供たちがレスリングを通して、成長していく姿が描かれる。お話のメインとは違うのに、なぜか、彼らの描写から目が離せない。目の見えない少年がレスリングをしている、楽しそうの稽古に通う。
『ロッキー』でおなじみの感動のラスト・ファイトもちゃんとある。映画のクライマックスクライマックスである。安心してみればいい。ちゃんと感動できる。でも、彼女の戦いをTVで見守る家族たちの姿がもっと感動的だ。要するにこれはそういう映画なのだということ。