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映画・演劇のレビュー

『カツベン!』

2019-12-27 20:27:59 | 映画

こんなにも楽しい映画がまるでヒットしていない。時代錯誤の企画だからだ。そんなこと、見る前からわかっていた話だ。でも、この企画でGOサインを出した。そこには何があったのか。それを確かめたくて劇場に行く。

周防正行監督だって今この企画で集客が可能だとは思っていなかったはずだ。でも、面白い映画を作ればお客は集まると信じた。(たぶん)そして、こんなに楽しい映画を作ったのだ。でも、興行的には惨敗だ。今の時代、活動弁士を主人公にした映画なんて誰も見たいとは思わなかった。それに、ただただ面白いだけではダメだ。これが今の観客の胸にアピールするものがなければ。でも、ここにはそれがない。

ノスタルジックで、丁寧に作られたドタバタ騒動。劇中でも描かれるサイレント映画の時代の空気がちゃんと伝わってくる。2時間強、この映画の世界にどっぷりと浸れる。活動弁士がスターだった時代。みんなが映画館に押し寄せ、笑って泣いて感動して。そこには夢があった。映画は観客に確かに夢を届けた。だけど、この映画が届けようとした夢は残念ながら、今の観客には届かない。劇場にやってきた一握りの観客には届いたかもしれないが、それだけでは意味がない。

なぜ、こんなことになったのかは、明白だ。この映画自体が、過去という時間で閉じられているからだ。これでは今の時代にはアピールしない。主人公がここで生きながら、どこに向かうのかも見えてこない。映画内の世界で閉じたままの映画は観客を巻き込まない。残念だが、それではダメだ。


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