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映画・演劇のレビュー

オリゴ党『天才だって死ぬ』

2016-04-11 20:37:21 | 演劇

 

2時間15分の大作だ。オリゴ久々の劇場公演で、気合いが入りまくっている。岩橋さんが持てる力を結集させて放つ渾身の力作、ということにしておこう。というのも、岩橋氏はいつものように自然体だし、描かれるお話もいつもと、かわらなし。長編にはなったけど、それもたまたま。大河ドラマを作るのでもなく、ただ、役者もたくさんだし、劇場だし、四方囲み舞台だし(これは関係ないかぁ)、なんだかんだで、長くなりました、というレベル。深い意味はない。リラックスして、この新作に挑んだ。だから渾身の、なんていうのは少し違う気がするのだ。

 

その肩の力の抜け方がいい方向に作用した、と思う。気合いは確かに入るけど、それが作品のバランスを崩すことはない。とても、丁寧にこのホラーな作品に奉仕する。岩橋氏、絶好調。いつものように、ある会社が舞台で、製薬関係のようだけど、なんだかわけがわからない怪しさ。

 

ここは町中にあるのになんだかエアポケットのような場所。(今までのオリゴは、地方の研究所とかいうパターンが多い)何を作っているのかは、定かではない。ふつうにヤクルトレディ(誉田さんが演じる)がここにやってくる。彼女がストーリーテラーとなるはずなのだが、群像劇として作られてあるから、彼女の視点に限定しない。社長はほとんど不在で、ここはマツオという男がすべての指示を出している。社員はほとんどが女性で彼女たちはみんなマツオに気に入られることを望む。彼の恋人になりたいのだ。

 

天才、というキーワードが、この作品の根底にあり、そこからお話も発想された。「天才」とは何なのかを巡るお話でもある。お話自体は、いつものオリゴ党の究極パターンの中で、展開する。カリスマ的指導者が自らのクローンを作り、クローンに駆逐されてしまう、なんていうよくあるパターンに収まるのは少しつまらないけど、2時間以上に及ぶ緊張感のある濃密な時間を提示したのは凄い。淡々としたタッチでの静かな芝居なのに、飽きさせない。ただ、天才の死にもっとちゃんとした意味を付与して欲しかった。核心部分が空白でもいいけど、そこに意味がない、という答えでもいいから、なんらかの衝撃を突き付けてもらえなくては納得しない。

 


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