新城毅彦監督の新作。彼は最近はこの手の青春映画ばかりが多い。あまり出来はよくない。以前のキレがないのだ。だから歯痒い。安全圏で勝負している気がするくらいに。もちろん手を抜いているわけではあるまい。スランプに陥っているのだろう。ファンとしてはこの辺で渾身の一作をものにして欲しい。もちろんこれは彼がしたい仕事とは思えない。だけど、このスケールの少女漫画のアイドル映画だけど、これは彼の得意分野だとは思う。だからこそ、ここで気合いを入れて頑張って欲しい。
ということで今回は少し期待して見たけど、残念な映画になった。狙いは悪くないし、ここまで「幼稚な」映画にしたのも悪くない。それはあくまでも戦略だから。だけどその狙いは当たらない。というか、さすがにこれだけでは映画にはならない。最初は笑えるし楽しいけど、いつまでもそれだけでは芸がない。
矢野くんはいつも怪我をするから、心配。なんとかしてあげたい。おせっかいが恋になる。彼女は躊躇わない。恋じゃないか、と幼なじみに指摘されると、受け入れる。ここまで素直に認められるとなんだか清々しい。ヒロインの吉田清子(この名前も凄い! 少女漫画とは思えないネーミング)はあまりに普通の子でどこにでもいるような女の子。演じた池端杏慈はそれなりにかわいいけど、やはり普通。
彼女だけでなくみんながあまりに素直で大丈夫か、こいつら、と反対に心配になる。今時こんな子どもたちがいますか? これは嘘でしょ、というか、ありえない。清子の友人ふたり。さらには清子の幼なじみと清子を好きなクラスメイト。
おぼこい田舎の低学年の小学生レベルのお話。それを高校2年の男女がやる。普通ならスポーツマンで勉強も出来るカッコいい優等生男子が、あまりかっこいいわけではない、というのも今まであまりないパターン。彼は純情でヒロインに片想い。だけど彼女は矢野くん一筋。肝心の矢野は自信なさげでぼんやりしている。
最初から最後まで、同じパターンでお話は単調。そこには何の仕掛けもなく、いかにもな展開。クライマックスの林間学校(高2なら修学旅行でしょ)での遭難(?)なんて、あんなアホな話はありません。帰って来ない清子を担任はほぼ放置プレイ。風邪ひいて寝てた矢野くんが探しに行くなんて、あり得ないし。
ツッコミどころしかないし。故意にしているにしても、これはやり過ぎ。かわいい児童向けアオハル映画。だけどこれを映画にしたのは立派かも。次回作の『366日』はもう完成しているみたいで、さかんに予告編が流れている。次はきっと傑作だと信じる。