野田秀樹の作品を2時間にコンパクトにまとめて見せる手腕はなかなかのものだ。ただ役者たちの声が通らないし、活舌が悪いから、何を言っているのやら、わからないところも多々ある。つかこうへいの芝居ではないのだから、ちゃんと台詞が欲しい。
野田の芝居って情報量の多さは半端じゃないのだが、この作品はなんだかとてもシンプルでこんな話だったっけ、と思うほど。アレンジしたのだろうけど、この構造の単純さはいいと思う。
舞台美術も凝っていて、すごい頑張りなのだが、それを生かし切れていない。障子は照明の効果も含めてパターンなのだが、スロープ状にした段差が生きないのが残念だ。せっかく苦心して作られた空間がちゃんと芝居と連動しないのはいただけない。
この公演だけ、今回のHPFにおいて唯一、2日間3ステージという普通の小劇場演劇の公演と変わらない条件で上演された。それだけの自信作なのだろう。さすがに上手い。2時間、飽きさせないのも素晴らしい。男優中心の芝居で、2人だけの女性キャストもよく頑張っている。
それだけに、あと少し、何かが欲しい。同じように革命を描く金蘭会の『僕たちが好きだった革命』と較べると、どうしても見劣りしてしまう。それは台本の力の差ではない。完成度の差とかいうのでもない。
台本をなんとか立ち上げることに腐心して、そこから描くべきものにまでは想いが至らないのだ。いろんなところで作り手の熱意が空回りしている。この大作を、なんとかして力でねじ伏せるだけで、いっぱいいっぱいになっている。だが、この、自分たちでは到底太刀打ちできないものに果敢に挑む姿勢は、やはり素晴らしいと思う。傑作ではないけど、見てよかったと思える作品だった。こういうものが見られるのがHPFの魅力なのかもしれない。