習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『扉をたたく人』他

2010-04-05 20:25:09 | 映画
 扉をたたく人に対して、扉を閉ざしてしまう国。自由の国、のはずだったアメリカは、9・11以降こういう閉鎖的な国になってしまったという現実を描こうとするのではない。どんな状況かでも、ここで人と人とが出会い、心を交わしあっていくことの喜びが描かれていくのだ。そこがとても素敵だ。音楽を通して2人の男が出会い、国が、そのうちのひとりを強制送還してしまっても、残された男の中には去って行った彼が教えてくれた音楽が残る。このとてもシンプルで力強い物語は、希望と再生のドラマである。

 パトリック・タムの『父子』(ディレクターズカット版)も見た。2時間38分に及ぶ大作だ。妻が家を出て行き、幼い息子とともに取り残された2人の日々が描かれていく。主人公である父親がつまらない男(アーロン・クオック)で、彼の弱さには辟易させられる。妻が出て行くのもよくわかる。悪い男ではない。ただ、自分を抑えられない。よくあるけなげな息子に支えられて、というパターンとは違う。息子に盗みをさせてしまう場面では、哀れを通り越して、人間がここまで自分を惨めにさせることができてしまうことに驚かされる。前半の妻を監禁してしまう場面もそうなのだが、彼にはプライドというものがない。暴力も含めての自分の弱さと、起きてしまった事態への展望のなさ。そんなくだらない父親を捨てれない息子。映画はそんな彼らをしっかりとみつめている。

 その他たくさん映画を見たが、時間もないし、詳しく書く余裕がないのがツライ。チン・シュウタンの久々の新作武侠映画『エンプレス』も見た。『レッドクリフ』がヒットしたから公開されたのだろうが、あまりに話がなさ過ぎて、閉口させられた。『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』や『テラコッタ・ウォリア』が懐かしい。ドニー・イェン、ケリー・チャン主演。派手な合戦シーンや、アクション満載なのだが。

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