東直子さんの小説デビュー作である。彼女はもともと歌人で、2006年にこの作品で作家デビューしたらしい。僕はその後の作品で彼女と出会い、その簡潔で、余白のたくさんある作品に心惹かれたにもかかわらず、今までさかのぼってこのデビュー作を読むことはなかった。不徳の次第である。彼女の魅力がここには全開している。というか、彼女の小説の秘密がここにはこんなにもあからさまに見える。やはり才能ある作家のデビュー作って、すごい。
短編連作のスタイルで、忘れ去られた郊外の遊園地を舞台にして、そこにやってくる人たちの、そして、そこで暮らす人たちの(要するにそこの従業員たちなのだが)ドラマが簡潔な文体で綴られていく。余白が多すぎてとまどうばかりだ。だが、そこが彼女の作品の魅力でもある。6つの短編のひとつひとつにそれがあり。その余白をつなぐとこの小説のテーマとなる。
長崎君は最初のエピソードに登場し、意味もなく消える。最後のエピソードでいなくなったはずの彼のその後が描かれる。不在の彼を気にすることもなく、この物語は綴られていく。忘れていた頃、ひょいと登場する。非日常の世界である遊園地。そこが非日常であることを超えてしまい消滅していく。そんな場所を舞台にして、いくつものドラマが綴られていく。どこか茫洋とした園長や、従業員たち、幽霊や、記憶喪失、世界から消えてしまいたい女や、忘れ去られた女が、ある時は、お客である人が従業員になり、ここにとどまり、やがて消えていく。そんなこんなのエピソードの数々がとても不思議なタッチで綴られていく。
ここが閉鎖されて廃園となる運命は最初のエピソードで描かれた後、なのに、さかのぼってここでのさまざまなエピソードがそのあとに続くのだ。とても不思議な構成になっている。でも、それが東さんにとってはとても自然体なのだ。これはどこから読まれても構わない小説で、各短編の一部だけを読まれたって大丈夫なくらいに、なっている。そんなつくりのゆるさが魅力で、そこに魅了される。偶然開いたページから、読んでみればいい。
短編連作のスタイルで、忘れ去られた郊外の遊園地を舞台にして、そこにやってくる人たちの、そして、そこで暮らす人たちの(要するにそこの従業員たちなのだが)ドラマが簡潔な文体で綴られていく。余白が多すぎてとまどうばかりだ。だが、そこが彼女の作品の魅力でもある。6つの短編のひとつひとつにそれがあり。その余白をつなぐとこの小説のテーマとなる。
長崎君は最初のエピソードに登場し、意味もなく消える。最後のエピソードでいなくなったはずの彼のその後が描かれる。不在の彼を気にすることもなく、この物語は綴られていく。忘れていた頃、ひょいと登場する。非日常の世界である遊園地。そこが非日常であることを超えてしまい消滅していく。そんな場所を舞台にして、いくつものドラマが綴られていく。どこか茫洋とした園長や、従業員たち、幽霊や、記憶喪失、世界から消えてしまいたい女や、忘れ去られた女が、ある時は、お客である人が従業員になり、ここにとどまり、やがて消えていく。そんなこんなのエピソードの数々がとても不思議なタッチで綴られていく。
ここが閉鎖されて廃園となる運命は最初のエピソードで描かれた後、なのに、さかのぼってここでのさまざまなエピソードがそのあとに続くのだ。とても不思議な構成になっている。でも、それが東さんにとってはとても自然体なのだ。これはどこから読まれても構わない小説で、各短編の一部だけを読まれたって大丈夫なくらいに、なっている。そんなつくりのゆるさが魅力で、そこに魅了される。偶然開いたページから、読んでみればいい。