劇団員の3人の手からなるオリジナル台本を、3人の演出で贈るオムニバス。(1本目と3本目は作、演出が入れ替わる。2本目は新鋭日高さんの作、演出。1本目は劇団のエース下村さんで3本目は座長の南田さん)3本とも、トイレが舞台となる。そこには3つの個室がある。3人3様、それぞれの持ち味がしっかり出ているので、バラエティに富んでいて楽しい。2度の休憩(各5分程度)を挟んで2時間、飽きさせない。
ただ、少しだけだが全体のテンポが悪いのが難点だ。その結果、芝居が間延びしてしまう。タメを作りすぎて、失敗している。もっとさらりと演出したなら、切れのいい芝居になったはず。全体をあと10分短くできればよかったのだ。構成も内容も悪くないだけに、惜しい。短編は観客に考え込ませる余裕を与えないのがいい。なのに、これは説明的。作り手の想いはわかるけど、もっとスマートに見せる方がいい。作り手の思い入れを拒絶するくらいのクールさが欲しい。
「おべんきで」はトイレに引きこもる2人の女と、掃除のおばさんの話。対照的に見えるふたりが、そうでもない、というオチもいい。2本目の「トイレの家族」はトイレの花子さん一家のお話。ホラータッチのコメディで楽しい。3本目は事故で死んだ妹と兄の話。加害者の女性は生き残る。誰が生きていて誰が死んだのか、最後までわからないところが、ミソ。ちょっとしたミステリータッチになっている。それぞれ、まるでタイプの違う作品で、それを3本並べたとき、新撰組の雑多な個性が奔放に発揮された作品として完結する。