前篇を見ていないので、いきなり後篇を見るのは、ちょっと無謀だが、前篇を見逃したので仕方なくそんなふうに見た。でも、十分楽しめた。
予定では2本連続で見ようと思っていたのだが、極度の不入りから早々に前篇の上映が終了し、後篇は、最初から1日1,2回上映でスタートして、2週間で終了してしまった。もったいない。こういう作品を2部作として上映するためには、もっときめ細やかな宣伝が必要だったのではないか。しかも、前篇から後篇までの間も空けすぎていた。(同時期公開で同じ2部作スタイルの『3月のライオン』よりも間は長い)決して大作というわけではないのだから、前後篇同時公開とか、もっと作品に見合った作戦を立てるべきだった。もったいない。
超能力を持つ子どもたちが、ある地方都市の未来を巡って、権力と戦いを繰り広げるというお話なのだが、そこには派手なアクションはなく、ストーリーのおもしろさで見せていく作品なので、映画自体は地味。キャストもアイドルを集めたわけではなく、まだこれから活躍する若手中心のキャスティングで、そこが売りにはならない。だから、深川栄洋監督の手腕で、青春映画として完成度の高い作品を目指した。
繊細な語り口で2時間の長さを感じさせない。前篇は103分だったので、2本同時公開か、3時間で一挙上映というのが、妥当な公開方法だったのではないか。
たまたま自分たちが手にしたそれぞれ別々の特別な能力を生かし、協力することで、この世界の未来を救う。偶然だが同時期公開の『メッセージ』とよく似た設定で、興味深い。この2本の主人公はいずれも、たとえ未来がどうなるのかわかったとしても、その希望のない未来に向けて全力で生きていこうとする。いや、この映画のほうは、少し違うな。こちらは未来を変えようとするのだが、うまくいかない、という話。
すべての人たちの記憶が消されたとしても、彼だけは忘れない。それが彼の能力だ。そのため彼は誰よりも傷つくことになる。忘れられないのは不幸だ。しかし、それが自分の運命であるのなら、受け入れる。その能力を大切にして、生かして、世界を守る。そして、同じように人とは違う力を持つ仲間たちとつながることで、町を守る。
この映画は世界の平和を守るとか、大きなことは言わない。ラストシーンで、みんなで河原の上を歩いていくのも、まるでどこにでもある青春映画のようで、ほほえましい。超能力なんか無くてもいい。だけど、その与えられた力によって、救えるものが、あるのなら、逃げるべきではないというメッセージはとても力強い。