習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

劇団乾杯『唯其丈』

2017-06-05 21:22:53 | 演劇

この日(5月27日)は、たまたま山本さんの芝居2本立になってしまった。1人はコトリ会議の山本正典さんで、もうひとりは乾杯の山本握微さん。ふたりとも、とてもへんな人で、彼らの作る芝居は実に面白い。山本握微さんは、いつも入場料無料で公演を打つ。頑なに。今回もそうだった。(お客にとってはありがたい。でも、制作はたいへんだ!)

 

開演5分前に役者がこの喫茶店に入ってきて、コーヒーを注文し、本を読み始める。今回の芝居の会場は喫茶店である。(PORT)中央のテーブルが芝居の舞台となる。店の中央部分がアクティング・エリアで、その左右に客席が用意させる。30人くらい入れば満席となる。

 

5分間、コーヒーを飲みながら、何も書かれていない本を読む(この本は国語辞典らしい.芝居の途中でわかることになる)、そんな彼女の姿をみつめることになる。開演時間の六時になると、山本さんがやってきて、「今から上演したいのですが、ちょっと準備のため、あの時計(店の壁に掛かっている時計)10分後に開演します」と言って去って行く。すると、テーブルについていた役者が立ち上がり、時計の針を10分進めて、芝居を始める。

 

喫茶店での2人の客の会話劇。60分という短い時間を思い切って使い、この小さな喫茶店から、月世界までの旅を見せてくれる。さまざまなギミックを用意する。狭い空間がいつのまにか、壮大な世界へと変貌する。大阪、北港通。四貫島中央通商店街のかたすみで、出会う。でも、そこが中国や韓国、アジアの町のどこかでもいい。月でも同じ。大阪のあるこの喫茶店と同じ喫茶店が月にもある、なんていうバカバカしい設定が自然と受け入れられる。

 

どこであろうと、人が暮らし生活している町なら同じなのだ。そんなどこにでもある町の風景の中で、旅する女が、地元の女と一瞬出会い、別れていく。其れだけのお話。

 

「それだけ」の「そ」の字が紙吹雪となり、トランクから溢れ出すラストシーンが素敵だ。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『美しい星』 | トップ | 大阪新撰組『短編まつり 個... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。