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映画・演劇のレビュー

『ガッチャマン』

2013-08-23 20:04:30 | 映画
 SFXを駆使したヒーローものは、アメリカ映画が続々と作っていて、もうお腹いっぱいなのだが、そんな時代に敢えて日本映画がその戦列に加わる。予算や技術面ではハリウッド映画は凌げない。ならば、何を目指すのか? 

 とても難しいところだが、ストーリーの面白さと発想の意外性、そこにしか対抗手段はないのではないか。そこで、ガッチャマンである。これはある種の戦隊ものだ。5人のヒーローが悪と戦う。だが本家の東映の戦隊ものは、あくまでも子供だけをターゲットにする。そこで、もう少し年齢をあげてあのノーテンキな世界を大予算で再現する。生身のヒーローたちが肉弾戦を繰り広げる。(といっても、あくまでもCGによるアクションなのだが)大掛かりなアクションは冒頭に展開する。なかなか迫力がある。だが、『アイアンマン3』とかと較べたなら、しょぼい。重量感がない。だが、オープニングとしては合格点だ。

 大切なことはその先である。映画は破壊と殺戮だけではなく、5人の友情や、チームワークを見せる。彼らにとっての日常描写が続く。ジュン(剛力彩芽)による恋バナとか、それをまるで相手にしないケン(松坂桃李)とか。たわいない話だ。だが、そんな5人の描写は嫌いではない。使命感を通して、戦う意味を問う、とか、ジュブナイルなのだが、そんな真面目さも心地よい。なぜ、こんなことをしなければならないのか。

 正義のためとはいえ、自分たちが盾になるのは理不尽だ、とか。彼らが戦う敵もまた人間であり、敵はある種の特異体質を持った少数派で、そんな彼らが生存を賭けて自分たちを疎外する人間たちと戦う。彼らには彼らの正義がある。だが、彼らが望むのは共存ではなく、戦争ある。自分たちが生き残るためには、(多数を少数が倒すためには)自分たちの圧倒的に有利な戦闘能力を駆使して、戦うしかない。この世界を征服することで自分たちの生存権を主張する。

 そんな敵に対して、選ばれた人間であるガッチャマンたちは、地球に住むたくさんの人々の命を守るため自らの命を賭けて戦う、なんていうような話だ。超シリアスというわけではない。マンガの映画化だし、描かれる世界観は薄っぺらだ。だが、それがとても危ういレベルで、心地よいバランスを保っている。大人向けの映画ではないけど、ただのお子様向けでもない。(だからこれは中途半端なのだ、とも言えるけど)

 これは少年少女向けのヒーローものとして、とてもよく出来ているのだ。悪の組織ギャラクターのボス、ベルクカッツェの正体とか、主人公たちの恋愛劇とか、オリジナルの設定をアレンジして、佐藤東弥監督の想い描くガッチャマンワールドをきちんと展開して見せる。ダークヒーローもの、として『ダークナイト』に匹敵するか、なんて誰も考えもしないだろう。だが、これは和製ヒーロー物としての矜持を保つ作品としてちゃんと評価されていいはずだ。

 クライマックスの怒濤の展開も、見せ場満載で、悪くない。科学忍法火の鳥もちゃんと見せてくれるし。ラストの続編を思わせるアメリカ映画が大好きなオチも御愛嬌。

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