こういうとても小さな小説をさりげなく提示できるフットワークの軽やかさが今のよしもとばななの魅力のひとつなのだろう。イギリス西端の田舎町を女二人が旅する。特別な観光地ではない。何が起こるというわけでもない。ここにはお話なんかないに等しい。しかも、たった5日間ほどの出来事だ。というか、ここでドラマが起こるわけではないから、出来事もない。ふらふらして、観光地であるモンサンミッシェルのような孤島に行くくらい。
従姉妹同士で旅する。40歳前で離婚したばかりの私と、祖父母を亡くして天涯孤独になったちどり。ほんとうに何にもないような、お話ですらない。ホテルの朝食がおいしい。とか、夜はどこで何を食べる、とか。お互いの孤独な心中を、ぶつけあうわけでもない。だが、何にもないから反対にとても満たされた気分にさせられる瞬間がそこにはある。
この本に続いて、同じ時期に出版された彼女のエッセイ『すばらしい日々』も読んだ。父親を亡くした前後の心境を綴る。これもまた、小さな小さな心境のスケッチだ。今の彼女の正直な心情が余すことなく描かれてある。
従姉妹同士で旅する。40歳前で離婚したばかりの私と、祖父母を亡くして天涯孤独になったちどり。ほんとうに何にもないような、お話ですらない。ホテルの朝食がおいしい。とか、夜はどこで何を食べる、とか。お互いの孤独な心中を、ぶつけあうわけでもない。だが、何にもないから反対にとても満たされた気分にさせられる瞬間がそこにはある。
この本に続いて、同じ時期に出版された彼女のエッセイ『すばらしい日々』も読んだ。父親を亡くした前後の心境を綴る。これもまた、小さな小さな心境のスケッチだ。今の彼女の正直な心情が余すことなく描かれてある。