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映画・演劇のレビュー

転機予報『□のない部屋』

2014-10-21 22:33:59 | 演劇
 □がない。だから、四角、死角(あるいは「資格」かも)のない部屋。という、このタイトルにあるアイデアを、この芝居は生かしきれない。もったいない話だ。せっかくの大胆さ。それをもっと大々的に取り上げるべきだ。

 生かせないのはタイトルだけではない。仕掛けられたお話の謎も、生かせないのだ。どうして、こんなふうにするのか、それすらわからない。気取った始まりかたは悪くはない。途中で話を一度リセットする、というのも、悪くはない。何なのだ、これは、と思わせる展開もいい。だが、その収束させ方がつまらない。というか、あれでは納得できない。

 3人の男女が地下室の密室に閉じ込められている。最初、彼らには、過去の記憶が一切ない。どうしてなのかは分からない。記憶を消されたのか。失くすほどの何かがあったのか。ただ、自分たちが何者で、なぜここにいるのか、それすらもわからない。部屋にはビデオカメラが一台ある。そこに録画された映像を見ることで、2人の記憶が戻ってくる。(ここが、謎だし)誰が何を目的でこんなことをするのか、そこでミステリとしてちゃんと話を引っ張らなくてはならないはずなのだ。ひとりだけ、そこに映像が残っていない男がいる。だから、彼だけは記憶が戻らない。仮面を使って記憶のない時間を象徴するのだが、別にそうする必要性は感じない。

 終わってみれば、ストーカーによる誘拐事件、という結論に落ち着く。男は自分が大好きなアイドルを拉致してくる。記憶を消し去り、自分も彼女と同じような被害者を装う。(要するに記憶が戻らない男ね)

 これでいいのか? 単純すぎないか。それまでの思わせぶりは何だったのか。その答えは、1時間という上演時間が物語る。要するに、ここにはお話としての展開部分がないのだ。導入と結論だけ。せっかくいい雰囲気で始まっただけに、これではなんだかがっかりだ。



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