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映画・演劇のレビュー

『ブラックフォン』

2023-04-29 08:18:00 | 映画

ホラーは大好きだったが、今はあまり見ない。配信で膨大な量の映画や、映画もどきが公開されているからだ。そこから自分の欲しい映画を探すのは難しい。ということで、リスクは大きく得るものは小さい。Jホラーの初期は興奮した。中田秀夫や清水崇。もちろん白眉は『リング』と『呪怨』。遡り70年代のアメリカ映画。『エクソシスト』がスタートだ。こちらの白眉はトビー・フーパー『悪魔のいけにえ』、スプラッター元祖のサム・ライミ『死霊のはらわた』。定番だけど、納得のベストだろう。

 
この映画の舞台は70年代の終わり。『悪魔のいけにえ』にも言及されている。時代背景が興味深い。何故わざわざそういう設定にしたんだろうか。たぶん原作者(あるいは監督)の子どもの頃なのではないか。だからこれは自伝的な作品かもしれない。だが、描かれるのはほのぼのとした郷愁ではない。子どもを誘拐監禁して殺害する変質者と、彼に誘拐された少年の話だ。先に殺された5人が今少年が監禁されている部屋の使われていないブラックフォンから電話をしてくる。主人公は彼らの指示によりここから逃げ出す。
 
お話自体はたわいない。だが、虐められていた主人公、彼を守ってくれる友人、夢で監禁された兄のいる場所を見る妹。(『世界の終わりから』の伊東蒼みたい)暴力を奮う父。無条件で妹の夢を信じる刑事。(妹からの電話だけで犯人がいるらしい家に強行突入なんてあり得ない)描かれるキャラクターが普通じゃないから、気になる。そして極め付けは終始仮面を被っているイーサン・ホークが演じる犯人だろう。イーサンがこんな役をわざわざ演じたのは何故か? それだけで十分ホラー。
 
ホラー映画というよりサスペンス映画かもしれないが、登場人物たちの行動が謎すぎてそこはホラーだ。とても変態的な体験だった。原作小説はスティーブン・キングの息子さんのものらしい。(ジョー・ヒル。短編集『二十世紀の幽霊たち』所収の『電話』)なるほどな、と納得した。これはキングのいくつかの作品にも通じる気がした。(『死霊伝説』とか、『IT』)
 
もちろん作品自体はたいした映画ではないけど、少し変わった映画でたまにはこういうのも悪くはない。

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