またまた「食」を取り上げた本だ。ただ今回はそこに「本」をアレンジした。しかも「絵本」だ。僕にはまだ絵本は敷居が高い。せいぜいYA本止まり。児童書もまだまだ難しい。子どもの本はあまりに膨大で手が出せないって感じ。まぁそんな大袈裟な話ではないけど。
さて、この本である。さすがポプラ社文庫オリジナルだ。甘いだけではない。一本筋が通っている。とてもよく出来た短編連作スタイルの長編小説である。第一章で登場するのは主人公、八木。彼が実は人間ではなくヤギだということはこの第1話のラストで明かされる。
第2話からは毎回ゲストがやってきて(お客さん、だが)彼らの話とそれに対して渡す絵本が示される、というパターンになる。2話から5話まで。主人公は実は八木ではなく、彼を飼っている奏。彼がお客さんに彼らが求めている本を提示する。
そしてラストの第6話はその八木の相棒、奏自体のお話、というスタイル。彼がなぜここに来て、暮らすことになったかが描かれる。
ヤギの八木はただのペットではなく相棒であるという事がしっかり全編を貫く。絵本屋なのに絵本を置いてない。お客さんに必要な本をオーダーメイドで提供する風変わりな絵本屋。自分の弱さと向き合い、周りの人たちを助ける。北の果て、小さな絵本屋さん、おいしいスープとトースト、そしてコーヒー。それだけ。もちろんそれで充分だ。