なんとも不思議な感触になっている。今までの浪花グランドロマンとはひと味もふた味も違う作品に仕上がった。いつもの浦部さんなら、もっとウエットな芝居だったのに、今回はなんだかドライなタッチだ。それが確信犯としてではなく、なんだか迷走してそこに至っている、という感じがする。浦部さん自身もこの素材を上手く扱い切れてない。距離感をつかめないまま作った、って感じ。手探りで芝居自身も進行していく。ちょっぴり不安で先が見えない。でも、一歩踏み出していかなくてはならない。このわからないところを大事にしたい。そんな感じだ。
IT企業に就職をしたはずなのに、全く専門的な知識もない女たちが、倒産した会社を建て直すため奮闘して、なんとか訪問介護の会社として再開する、というなんだかよくわからないようなお話をベースにして、家族の在り方、集団のありかたへとシフトチェンジしていきつつも、そのいずれをも突き詰めることなく、さらりとなぞるだけ。芝居としての落としどころがよくは見えない。
いいとか、わるいとか、そういうのではなく、なんだかよくはわからないまま、でも、それでいいや、という感じの芝居になっている、ような、いないような。インターネットが僕たちの世界をどう変えていくのか、とかいうようなお話から始まったはずなのに、なんだかとてもアナログなお話になるところは、浪花グランドロマンらしい。結局は、女たちだけの小さな家族のような会社が、手探りで船出していく姿を描く、というところに落ち着く。