「退屈でけだるい放浪者が燃えるとき」というキャッチ・コピーがカッコイイ。このコピーで描かれたことが一応はそのまま芝居になっているのだが、あと少しのところでそれが感動にまでは至らないのが残念だ。だが、今回の作品は完成形ではない。しかも僕が見たのは公演の初日である。この三日間で役者たちは成長していく。だから、楽日に見た人は感動のステージに出会うことが出来るかもしれない。彼らは日々進化していく。そこに、この集団の魅力がある。そして、芝居と言うものの本来の魅力もそこにある。
腹筋善之介さんが腹筋塾を通して出会った若い役者たちとともに立ち上げた劇団の旗揚げ公演だ。多忙なスケジュールを縫って大阪までやって来て、まだ何者でもない若いだけの役者の卵たちとともに、彼が汗を流すのは、ただの道楽ではない。あるいは若手育成のための年長者の責任感からでもない。単純に面白いと思ったからであろう。
つまらないことに時間を取るほど僕らは暇ではない。例えば「ここに集まった奴らのやる気にほだされた。彼らに可能性を感じた。それが何なのか、自分自身で確かめるため、彼はこの集団に関わる。」そんなことなのかもしれない。直接彼からそんな話を聞いたわけではない。だが、なんとなくそんなことではないか、なんて勝手に空想してる。そして、それってなんだか、素敵な話ではないか、なんて。
打算ではなく、あくまでも自分のための行動である。そして、そんな彼のもと、必死になって彼のメソッドを学ぼうとする役者たちがここにいる。
65分というタイトな上演時間がいい。一瞬すら疎かにしない。気を抜けない。一瞬で終わるような芝居を目指す。これは短距離走だ。だが、内容は必ずしもそうではない。本来この内容なら2時間の大作になってしまう。なのに、そうはしない。これは芝居を通して世界観やドラマを見せることを眼目にしたものではない。壮大なスケールの芝居になるし、確かにそうなっている。しかし、大事なことはこの世界の中で、主人公たちが、もがき戦い何かを勝ち取ること、それがテーマを含む全てを凌駕する。世界が今どんなふうになっていて、どこに向かっているのか、なんてことはあくまでも背後に置き、ここで彼らが何をするのか、それをまず描く。
すごいスピードで話は進む。役者たちはその流れについていくだけで精一杯だ。あれよ、あれよという間に一堂が現実世界で会するラストシークエンスまで、怒濤の勢いでなだれ込んでいく。ゲーム世界というバーチャル空間と、現実の世界という2つの空間をつないで、それがひとつに重なっていく。何が現実で、何が仮想なのかなんてこの世界ではもう紙一重だ。その境界なんてない、と言っても過言ではあるまい。そんな中で彼らは自分を守ろうとする。知らない間に汚染されていく世界に染まるのではなく、現実の感触を拠りどころにして、生きている実感を大事にする。その先に未来はある。ビルの清掃現場で働く彼ら(これもまた、シュールと言えばシュールな設定だ。彼らは大都会の真ん中にあるビルで真夜中から夜明けまで働く。本来なら人がたくさんいるはずの場所で、誰もが眠りに着く人のいない時間を仕事として過ごすのだ。)の現実を拠点にして彼らの闘いが描かれる。バイト先でのいざこざとか、人間関係から壮大なスケールの陰謀話までが1本に繫がる。
11人の役者たちのアンサンブルプレイを楽しんでほしい。彼らの今がここには描かれる。
腹筋善之介さんが腹筋塾を通して出会った若い役者たちとともに立ち上げた劇団の旗揚げ公演だ。多忙なスケジュールを縫って大阪までやって来て、まだ何者でもない若いだけの役者の卵たちとともに、彼が汗を流すのは、ただの道楽ではない。あるいは若手育成のための年長者の責任感からでもない。単純に面白いと思ったからであろう。
つまらないことに時間を取るほど僕らは暇ではない。例えば「ここに集まった奴らのやる気にほだされた。彼らに可能性を感じた。それが何なのか、自分自身で確かめるため、彼はこの集団に関わる。」そんなことなのかもしれない。直接彼からそんな話を聞いたわけではない。だが、なんとなくそんなことではないか、なんて勝手に空想してる。そして、それってなんだか、素敵な話ではないか、なんて。
打算ではなく、あくまでも自分のための行動である。そして、そんな彼のもと、必死になって彼のメソッドを学ぼうとする役者たちがここにいる。
65分というタイトな上演時間がいい。一瞬すら疎かにしない。気を抜けない。一瞬で終わるような芝居を目指す。これは短距離走だ。だが、内容は必ずしもそうではない。本来この内容なら2時間の大作になってしまう。なのに、そうはしない。これは芝居を通して世界観やドラマを見せることを眼目にしたものではない。壮大なスケールの芝居になるし、確かにそうなっている。しかし、大事なことはこの世界の中で、主人公たちが、もがき戦い何かを勝ち取ること、それがテーマを含む全てを凌駕する。世界が今どんなふうになっていて、どこに向かっているのか、なんてことはあくまでも背後に置き、ここで彼らが何をするのか、それをまず描く。
すごいスピードで話は進む。役者たちはその流れについていくだけで精一杯だ。あれよ、あれよという間に一堂が現実世界で会するラストシークエンスまで、怒濤の勢いでなだれ込んでいく。ゲーム世界というバーチャル空間と、現実の世界という2つの空間をつないで、それがひとつに重なっていく。何が現実で、何が仮想なのかなんてこの世界ではもう紙一重だ。その境界なんてない、と言っても過言ではあるまい。そんな中で彼らは自分を守ろうとする。知らない間に汚染されていく世界に染まるのではなく、現実の感触を拠りどころにして、生きている実感を大事にする。その先に未来はある。ビルの清掃現場で働く彼ら(これもまた、シュールと言えばシュールな設定だ。彼らは大都会の真ん中にあるビルで真夜中から夜明けまで働く。本来なら人がたくさんいるはずの場所で、誰もが眠りに着く人のいない時間を仕事として過ごすのだ。)の現実を拠点にして彼らの闘いが描かれる。バイト先でのいざこざとか、人間関係から壮大なスケールの陰謀話までが1本に繫がる。
11人の役者たちのアンサンブルプレイを楽しんでほしい。彼らの今がここには描かれる。
すばらしく内容の濃い素晴らしい批評を書いていただきありがとうごいます。
まだまだ、未熟な劇団ですが、これからもよろしくお願いします。