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映画・演劇のレビュー

『ジャージの二人』

2008-09-04 21:02:17 | 映画
 何もない夏休みを描く。軽井沢の別荘で過ごす大人の2人。32歳の息子と54歳の父がなぜか2人で何日間かの休暇を過ごす。2006年夏と、翌2007年の夏。ふたつの夏のスケッチだ。ほんとに何もない。あまりに何もないから怒ってしまう人もいることだろう。だが、これってやっぱりすごい。

 ふたつの夏を、同じように彼らはここで過ごす。何もしないで、ただぼんやりしてる。堺雅人と鮎川誠。彼らの無表情と、はにかみがいい。じゅっと同じジャージを着ている。洗濯はしないのかなぁ。そこは、なんだか気になる。

 普通映画って、現実と違いいろんな事件が起きたりするのが常なのに、この映画は極力、いろんなことを起こさせないように企んでいるかのごとく、なにも起きない。それってあんまりではないか。見ていて退屈してしまうくらいだ。しかし、それがなぜか(と、いうか確実に、だ!)おもしろいのだ。

 作者(『アヒルと鴨のコインロッカー』の中村義洋監督)のねらいはそこにある。ぼーっとしているだけの大人の夏休み。だいたい32歳の息子と過ごす親父54歳なんて、それだけでかなり異常だ。だから、それ以上のことは何も起こらない。それだけで充分変なのだ。

 前半は、2人で過ごす夏の描写。タイトルは『ジャージの二人』。そして、後半は、息子の妻を含む『ジャージの三人』の話。と見せかけて、妻はすぐに帰ってしまって、結局また二人かよ、と思わせて、実はすぐに父の今の奥さんとの子供である女の子がやって来て、やはりめでたく三人となる。この後半には少し事件もあり、前年とは微妙に違う展開を見せる。でも、それだって、たいしたことではない。映画が取り上げるほどの事件ではない。まぁ、その結果いろいろありラストは一人残された息子の日々が描かれる。そこで、画面にはちゃんと『ジャージの一人』とタイトルも出てくる。

 これってなんだか3本立の映画みたいだ。40分、40分、10分(たぶんそれくらいだろう)の短編、中編の3本。(だって、ちゃんと3回メインタイトルがでるから)まぁ、しゃれだけど。合計90分ほどの映画だ。

 ちょっとした脱力系の映画だが、岩松了とか、三木聡とは、違う。もっとナチュラルで、そのくせ、なかなかあざとい。そこがちょっと鼻につく、という人もいるだろうが、僕はとても気にいった。どうでもいいことをここまで丁寧に見せて、でも結局は何もない、だなんて、それってすごい。

 主人公の二人がいい。登場人物は合計たったの6人。(背景程度に何人か人は写るが)この少なさがいい。自然もきれいで、でも何にもない。それってサイコー。長島有の原作小説のまんまなのもいい。

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