豊島ミホの最後の大長編小説。この作品の後、彼女はしばらく休養を取るらしい。断筆するのかもしれない。まぁ、あまりに全力で頑張り過ぎたから、疲れてしまったのだろう。彼女の本格長編というのももしかしたらこれが初めてではないか。当然のことながら、かなり気合が入っている。
27歳の何をやってもダメな女性が、もう一度高校時代をやり直すためにタイムスリップして12年前にやってくる、という夢のようなお話。主人公はこのタイムスリップ女の孝子ではなく、その秘密を打ち明けられるクラスメートの沙織のほうに設定されてある。孝子のバカ見たいな「未来ネタ」に乗せられて、2度目を生き直す彼女と付き合う。だが、もちろん沙織は初めての高校生活である。なのにそれを、孝子のおかげで不思議な視点から見つめることとなる。
人生をやり直せたら、と誰もが一度は切実に思ったことだろう。だが、そんなことは不可能だ。いい加減諦めるしかない。昔、何度となくそんな後悔をしたが、今ではまるでそんなことは思わなくなった。要するに歳を取ってしまったということだ。なんだかそう思うと悲しい。今日帰りの電車の中で、窓に映る自分の顔を見て驚いた。凄くくたびれた顔をしてる。こんなにも自分が年を取ってるのか、と改めて感心した。そりゃ、もう50歳である。10代ではないし、20代でもない。だいたい30代でもないのだ。(しつこい奴だ!)先日の『サムシングブルー』に感情移入出来なかったのも、自分が年を取り過ぎたからかもしれない。あの小説からは主人公の切実な想いが、読み手である僕に伝わらなかった。それって作者ではなく、僕の慣性の問題があるのかも、なんて。さて、そんなこんなで、今回である。
現実的に考えて、もう一度やり直すことが可能なら、上手くやれるだなんてとても思えない。もう大人だから、客観的にそのくらいはわかる。だから、というわけではないが、この小説の孝子がけっこう醒めてるのが、おもしろい。この小説がはしゃいだけのものなら、途中で投げ出していただろう。熱くなるのではなく、静かに2度目の人生を見つめていく、その視線がいい。
高校時代を2度やることは出来ないから、僕は高校教師になった。自分の高校時代がとても愛おしいし、あの3年間は自分にとって本当に幸せな時間だった。だから、出来ることなら高校を卒業したくはなかった。だけど、そんなことは不可能だ。物事には、やがて、終わりがくる。そんなこと小さな子供でも知ってる。では、どうしたらずっと高校生のままでいられるだろうか。そう考えた時に思いついたのが、教師になることだった。まぁ、それだけの話だ。物事はそんなにも単純ではないが、僕は今でも高校にいる。そして永遠に続く高校時代を生きている。ここでは何度でも繰り返すことが可能だ。
まぁ、至福の時間でまどろんでいる、だなんて言わないけど、でも、こういう小説を読んでいると、なんだか自分がほんとうに幸せな存在だと思える。うちのクラスの子供たちは今、受験のまっ盛りにあり、苦しんでいる。彼らとともに、最後の時間を過ごしながら、でも、クラブでは1,2年生たちと青春してる。今チームは冬の大会まっ盛りで、こちらも毎日大変だ。でも、なんだか、自分ひとりが毎日楽しんでいるようで、恐縮してしまう。
さて、この『リテイク・シックスティーン』だが、明日から後半戦に突入である。ここからどうなるのか、楽しみ。
27歳の何をやってもダメな女性が、もう一度高校時代をやり直すためにタイムスリップして12年前にやってくる、という夢のようなお話。主人公はこのタイムスリップ女の孝子ではなく、その秘密を打ち明けられるクラスメートの沙織のほうに設定されてある。孝子のバカ見たいな「未来ネタ」に乗せられて、2度目を生き直す彼女と付き合う。だが、もちろん沙織は初めての高校生活である。なのにそれを、孝子のおかげで不思議な視点から見つめることとなる。
人生をやり直せたら、と誰もが一度は切実に思ったことだろう。だが、そんなことは不可能だ。いい加減諦めるしかない。昔、何度となくそんな後悔をしたが、今ではまるでそんなことは思わなくなった。要するに歳を取ってしまったということだ。なんだかそう思うと悲しい。今日帰りの電車の中で、窓に映る自分の顔を見て驚いた。凄くくたびれた顔をしてる。こんなにも自分が年を取ってるのか、と改めて感心した。そりゃ、もう50歳である。10代ではないし、20代でもない。だいたい30代でもないのだ。(しつこい奴だ!)先日の『サムシングブルー』に感情移入出来なかったのも、自分が年を取り過ぎたからかもしれない。あの小説からは主人公の切実な想いが、読み手である僕に伝わらなかった。それって作者ではなく、僕の慣性の問題があるのかも、なんて。さて、そんなこんなで、今回である。
現実的に考えて、もう一度やり直すことが可能なら、上手くやれるだなんてとても思えない。もう大人だから、客観的にそのくらいはわかる。だから、というわけではないが、この小説の孝子がけっこう醒めてるのが、おもしろい。この小説がはしゃいだけのものなら、途中で投げ出していただろう。熱くなるのではなく、静かに2度目の人生を見つめていく、その視線がいい。
高校時代を2度やることは出来ないから、僕は高校教師になった。自分の高校時代がとても愛おしいし、あの3年間は自分にとって本当に幸せな時間だった。だから、出来ることなら高校を卒業したくはなかった。だけど、そんなことは不可能だ。物事には、やがて、終わりがくる。そんなこと小さな子供でも知ってる。では、どうしたらずっと高校生のままでいられるだろうか。そう考えた時に思いついたのが、教師になることだった。まぁ、それだけの話だ。物事はそんなにも単純ではないが、僕は今でも高校にいる。そして永遠に続く高校時代を生きている。ここでは何度でも繰り返すことが可能だ。
まぁ、至福の時間でまどろんでいる、だなんて言わないけど、でも、こういう小説を読んでいると、なんだか自分がほんとうに幸せな存在だと思える。うちのクラスの子供たちは今、受験のまっ盛りにあり、苦しんでいる。彼らとともに、最後の時間を過ごしながら、でも、クラブでは1,2年生たちと青春してる。今チームは冬の大会まっ盛りで、こちらも毎日大変だ。でも、なんだか、自分ひとりが毎日楽しんでいるようで、恐縮してしまう。
さて、この『リテイク・シックスティーン』だが、明日から後半戦に突入である。ここからどうなるのか、楽しみ。