こういうエンタメ芝居がずっと見たかった。だけど、それはなかなか叶わない夢だった。ストーリーのおもしろさと、作り手の熱いハートが上手く合致し、その上で確かな技術を備えた芝居を作ることは、出来そうでなかなか出来ない。上手い役者を集めて、優秀なスタッフを集めたからといって出来るものではない。一番大事のことは、その作品を通して観客に何を伝えるか、である。そして、それをきちんと観客の胸に手渡すことができるのか、ということだ。
エンタメ芝居はどうしてもわかりやすさを求める。不特定多数の観客にアピールするためには当然のことだろう。その結果作品は甘くなったり、つまらない妥協によってゆがめられたりする。殊更テーマを前面に押し出すことをよしとするわけではない。作り手が明確なビジョンを持ち、それを実現するだけの方法論と自分たちの世界を信じる力が必要だ。これはそんないくつもの高いハードルをクリアした稀有の舞台である。1級のエンタテインメントに必要なすべての要素を備えている。
とりわけ素晴らしいのは、ドラマの終盤である。悪魔の正体がはっきりしたところからの展開のさせ方だ。ふつうの芝居なら、ここから単純な善悪の戦いとなり、エンディングに至るところだが、この作品はここから本格的にこの作品が描きたかったドラマの核心に入っていくこととなる。幾重にも組みたてられた論理と論理がぶつかり合っていきながら、本当に大切なことってなんだかが語られていく。
西の国のお姫さまと、東の国の王子さまが、現実から逃げてしまい心を閉ざしてしまったこと。武器商人である主人公が、自分たちの町を守るために両国に武器を作り続けてきたこと。戦争というシステムの持つ幾つもの問題がとてもわかりやすく図式化されてある。そこから戦争の本質を抉り取っていくこととなる。お話の単純さの裏側にある確かな奥行きがこの作品をここまで面白いものにした。
ファンタジーというスタイルでしか語れない真実がここにはある。しかも舞台美術、衣装だけでなく、作品世界を形作るビジュアル全体がすばらしい。さらには主人公を演じた片岡百萬両だけでなく、すべての役者たち、ダンサーたちによるアンサンブル。それらが混然一体となったことで成立した奇跡の作品である。2時間半に及ぶ大作だが、ここには全く無駄がない。
サーカスのテントの中の迷宮を思う存分に見せてくれるのもいい。この閉ざされた空間が夢幻の広がりを見せてくれるのが素晴らしい。これは作、演出を担当した竜崎だいちさんが、自らの世界観を開花させた渾身の力作である。クレジット上では演出は片岡さんになっているが、全編出ずっぱりの片岡さんを支えて、この作品全体をドライブしたのは彼女だ。まだまだ書き足りないが今回はとりあえずここまで。ちょっと調子に乗って褒めすぎました。まぁ、それくらいに興奮させられた、ということか。
エンタメ芝居はどうしてもわかりやすさを求める。不特定多数の観客にアピールするためには当然のことだろう。その結果作品は甘くなったり、つまらない妥協によってゆがめられたりする。殊更テーマを前面に押し出すことをよしとするわけではない。作り手が明確なビジョンを持ち、それを実現するだけの方法論と自分たちの世界を信じる力が必要だ。これはそんないくつもの高いハードルをクリアした稀有の舞台である。1級のエンタテインメントに必要なすべての要素を備えている。
とりわけ素晴らしいのは、ドラマの終盤である。悪魔の正体がはっきりしたところからの展開のさせ方だ。ふつうの芝居なら、ここから単純な善悪の戦いとなり、エンディングに至るところだが、この作品はここから本格的にこの作品が描きたかったドラマの核心に入っていくこととなる。幾重にも組みたてられた論理と論理がぶつかり合っていきながら、本当に大切なことってなんだかが語られていく。
西の国のお姫さまと、東の国の王子さまが、現実から逃げてしまい心を閉ざしてしまったこと。武器商人である主人公が、自分たちの町を守るために両国に武器を作り続けてきたこと。戦争というシステムの持つ幾つもの問題がとてもわかりやすく図式化されてある。そこから戦争の本質を抉り取っていくこととなる。お話の単純さの裏側にある確かな奥行きがこの作品をここまで面白いものにした。
ファンタジーというスタイルでしか語れない真実がここにはある。しかも舞台美術、衣装だけでなく、作品世界を形作るビジュアル全体がすばらしい。さらには主人公を演じた片岡百萬両だけでなく、すべての役者たち、ダンサーたちによるアンサンブル。それらが混然一体となったことで成立した奇跡の作品である。2時間半に及ぶ大作だが、ここには全く無駄がない。
サーカスのテントの中の迷宮を思う存分に見せてくれるのもいい。この閉ざされた空間が夢幻の広がりを見せてくれるのが素晴らしい。これは作、演出を担当した竜崎だいちさんが、自らの世界観を開花させた渾身の力作である。クレジット上では演出は片岡さんになっているが、全編出ずっぱりの片岡さんを支えて、この作品全体をドライブしたのは彼女だ。まだまだ書き足りないが今回はとりあえずここまで。ちょっと調子に乗って褒めすぎました。まぁ、それくらいに興奮させられた、ということか。