こんなバカバカしい映画をしっかり作り続ける三池崇史は偉大だ。むちゃくちゃを言う。むちゃくちゃをする。もうやりたい放題し放題。しかも、それが限りなくエスカレートして、映画自体が空中分解してもまるで気にもしない。だいたいヒロインが映画が始まって10分くらいのところで、死ぬなんて前代未聞だ。詐欺じゃないか、とも言える。武井咲を見に来た観客は怒るで! しかも、あの死に方。ないわぁ。ゴキブリ男が出てきた瞬間、ゴキッと、首を捩じられて、終り。えっ、それだけ? ゴキブリにゴキッと、やられるなんて、(安物のギャグかい、)えっなんで・・って感じ。何がなんだか。何が起きたのか、彼らにも、観客にもわからないくらいの出来事。さすがにあれで死なないだろ、と思うけど、死んでた。
冒頭の『ブレードランナー』のパロディのような東京の街も笑える。ここまで安易にまねしなくてもいいやん、と思うけど、やりたいから、やる、って感じ。しかも、ゴキブリみたいな虫を調理して食べてるし。そういえば、この雑然とした未来都市の描写はリメイク版の『トータルリコール』(オリジナルのシュワルツェネッガーの映画より、これのほうがよく出来ていた!)でもやっていた。コリン・ファレスが酸性雨の降る香港の魔窟(九龍城ね)のようなセット然とした都市の迷宮を逃げ惑うシーンを延々と見せたけど、この映画はすぐに捕まって終わる。
で、そこからが本題の火星での描写なのだが、雑な展開が凄い。ゴキブリと苔で、環境を変化させた火星に降り立つと、なんとそこは進化して凶暴化したゴキブリ星人が跋扈する世界。このゴキたちが笑える。しかも、どんどん増えてきてもう駆除出来る範囲なんか超えているのに、彼らは果敢に戦いを挑むのだった。
でも、そこには悲壮感はない。ただのバカ。お話の展開がいいかげんなので、話に乗れなくなる。しかも、昆虫人間に変身するけど、多勢に無勢どうしようもない。新感線の中島かずきが脚本を担当しているのだが、お話にまるで奥行きも何もあったもんじゃない。昨年の『極道大戦争』といい、これといい、最近の三池崇史はますますバカに磨きがかかる。でも、さすがに飽きてきた。もっとちゃんとした映画が見たい。これだけのアイデアと熱意を込めたのである。ただのバカではもったいないし。