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映画・演劇のレビュー

『きっとここが帰る場所』

2013-04-27 08:51:53 | 映画
 なんだか説明不足で置き去りにされる。そんな映画だ。でも、風景が圧倒的に美しく、そんな場所に置き去りにされるのだから、まぁ、それはそれでいいかぁ、とも思う。異常な化粧を施したショーン・ペンの姿のインパクトにひきずられて、この映画は一見なんだかとても異常な物に思える。だが、そうではない。これはちょっとしたロードムービーだ。ダブリンからニューヨークへ。30年間まるで音信のなかった父の死。父との確執。死んでしまった後の和解。父の心残りを息子であるショ-ン・ペンが晴らす。そんな話。

 彼は、20年間、活動を停止したままのカリスマ・ロックスターで、今は妻と2人で何もすることなく、豪邸で毎日を過ごしている。何もしなくても生きられるほどのお金はある。(株で儲けているようだ。)

 彼の内面は描かれない。ただ、彼の今を淡々と見せるだけ。そっけない。でも、そんなそっけなさがこの映画のスタイルだ。化粧に隠された本来の顔。化粧の下にはそれがあるはずなのだが、見せない。というか、先にも書いたが、そのみっともない化粧がすごい。本来なら美しく見せるためのものが、結果的には、今の彼の老残を晒している。その姿に周囲がぎょっとする。でも、本人はそうでもない。というか、これが彼だ。この姿でずっと生きてきた。現役のミュージシャンならいざ知らず、今はただの初老の男だ。もちろん有名な伝説のミュージシャンだから、みんな彼のことを知っている。でも、彼にとってはそんなことはどうでもいいことだ。

 なんだかゾンビのようで、痛々しい。ぼそぼそとしゃべる姿も印象的だ。そんな彼が浮遊するように旅する姿を映画は追いかける。そして行きつく先、そこに答がある。ラストシーン。メイクを落として素顔になった彼が帰ってくる。なるほど、と思う。





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