昨年秘かに評判になった作品だ。ようやく見た。噂に違わぬ快作である。というか、怪作か。もう少しで傑作になることも出来たはずだが、後半で破綻する。なぜ殺したのかを描かないのはいい。彼の行動を謎に包んだまま、彼女だけがすべてを理解し、行動する。ありえない、と思いながらも、話の中に引き込まれていく。これは万田邦敏監督の独壇場だ。豊川悦司の殺人犯と小池栄子の彼にシンパシーを感じる女性の、お互いに言葉も交わさないままの恋愛劇は刺激的で見ていてドキドキさせられる。2人がなんと結婚し(面会室でしか会ったことがないのに)擬似的な共犯関係を築きあげる、というところまでは凄い。だが、ここから彼女が暴走していく。惜しいなぁ。
だいたい黙秘を続けた豊川が公判で初めて言葉を発するところから、この映画の構図は徐々に崩れていく。思い込みが暴走し、お互いの中にある孤独と共鳴する、という図式は悪くない。間に仲村トオルの弁護士を介して向き合うというのも、おもしろい。
わからないままどんどん加速していく。だが、いつの間にやら映画は観客の想像力を刺激しないものとなる。嘘くさくなるのだ。緊張の糸が途切れる。小池栄子が自分をすべて内に秘めて行動するさまが凄いのに、彼女がホラーな行動を取ったり実際の行動をするなんて掟破りだ。ラストは衝撃なんかではない。ああぁ、って感じだ。あれはない。しかもあの結末の接吻である。目が点にになった。あれはないだろ。いかようにも解釈は可能なのだが、ただのこけおどしにしか見えない。
雑誌記者に囲まれ、不敵な笑みを浮かべるシーンにはどきっとさせられたが、あそこがギリギリのラインだ。そこで踏みとどまって欲しかった。
だいたい黙秘を続けた豊川が公判で初めて言葉を発するところから、この映画の構図は徐々に崩れていく。思い込みが暴走し、お互いの中にある孤独と共鳴する、という図式は悪くない。間に仲村トオルの弁護士を介して向き合うというのも、おもしろい。
わからないままどんどん加速していく。だが、いつの間にやら映画は観客の想像力を刺激しないものとなる。嘘くさくなるのだ。緊張の糸が途切れる。小池栄子が自分をすべて内に秘めて行動するさまが凄いのに、彼女がホラーな行動を取ったり実際の行動をするなんて掟破りだ。ラストは衝撃なんかではない。ああぁ、って感じだ。あれはない。しかもあの結末の接吻である。目が点にになった。あれはないだろ。いかようにも解釈は可能なのだが、ただのこけおどしにしか見えない。
雑誌記者に囲まれ、不敵な笑みを浮かべるシーンにはどきっとさせられたが、あそこがギリギリのラインだ。そこで踏みとどまって欲しかった。