2021年の秋に出版された時には、あまりに予約がありすぎて、さすがに読むことを諦めたけどブームが落ち着いてきたから今ならようやく読むことができる。今は、読めてよかった。400ページ越えの長編小説。圧巻の苦しみ。
ブックカバーの絵が凄まじい。男の顔。口から下。長い首までのドアップ。圧倒的なインパクト。これはなんだぁ、と思う。読み始めてからも同じ。あの絵の男が主人公のひとり。アキは深沢暁だが、北欧の俳優アキ・マケライネンとそっくりで、本人は彼を尊敬し、アキを名乗る。そんな彼とは高校で出会い、33歳で彼が亡くなるまで、友情を紡ぐのが、俺。アキ・マケライネンをアキに教えたのも彼。これはそんなふたりの18年に及ぶドラマ。
貧困、虐待、過重労働。過酷な生活が連綿と綴られていく。あまりのことに読んでいても目眩がする。こんな生活を続けることはないから、逃げ出せ、と思うけど、彼らは逃げない。真正面から向き合い、破滅の道を歩む。読んでいて息苦しい。辛すぎて読み進めるのが、苦しい。
こんなにも衝撃的で、凄まじい小説だとは思わなかった。最後まで圧巻、だからふたりの地獄巡りからは目が離せない。どうしてこんな生活を送るのか。違う生き方は出来なかったのか。何度もそう思う。救いがないけど、やはり目を背けることは出来ない。
最後まで読んだとき、こんな世の中だけど、それでも僕たちは生きていくのだ、と生きなくてはならないと、なんだか勇気をもらった気がする。凄い小説である。