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映画・演劇のレビュー

TRASHMASTERS『埋没』

2018-02-17 10:25:59 | 演劇
  近年こんなにも硬派の芝居を見たことがない。だから驚いた。作り手の本気が熱い。もちろん気持ちだけではなく、がっちり作られた芝居である。正攻法で攻めてくる。2時間半の大作で、容赦ない。重い芝居だ。1本調子で、途中、少し中だるみするところも確かにある。しかし、最初から最後までギリギリのところで緊張感が持続する。   終盤、公園の遊具の話からラストまでは圧巻である、この話が遠い昔の遠い場所の話で . . . 本文を読む
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『羊の木』

2018-02-15 21:04:19 | 映画
  『美しい星』の吉田大八監督最新作。前作に負けないくらいに変な映画だ。でも、この変さが面白い。普通にしているけど、ユーモアが漂う。過疎化の進む地方の役場で働くとある男(錦戸亮)が主人公。今回彼に与えられた仕事はこの小さな町に移住してくる6人の男女のお世話。彼らは殺人犯で、刑期を終えたばかり。町はそんな彼らを受け入れて人口減にテコ入れしようとする。だが、彼らはそれぞれ一癖も二癖もある奴ばかりで、 . . . 本文を読む
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演劇EXPO2018 『あんたの戯曲上演させてくれへん?企画 Bプロ』

2018-02-15 21:03:20 | 演劇
  Bプロは3本立。期待の大岡淳『詩劇 空に墜ちた男』があまりのファンタジーで驚く。トークショーの大岡さんの理路整然とした話し振りと作品のほんわかしたタッチがまるで水と油のようで、おかしかった。それは坂本演出のせいなのかもしれないけど、バカバカしくて楽しい。大池容子『遊星からの少女X』はタイトルそのままのお話でショートショートならではの魅力に溢れた短編。なんでもないどこにでもあるような「初恋もの . . . 本文を読む
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演劇EXPO2018 『あんたの戯曲上演させてくれへん?企画 Aプロ』②

2018-02-15 21:02:31 | 演劇
  泉寛介演出の『おおきな声がうるさい』がおもしろい。豪華キャストが集結して、中編ではなく長編仕様の作品なのだが、それをこの尺で見せたとき、とてもシンプルで心地よいものに仕上がった。妻を失い失意の日々を送る父親と、彼を心配する子どもたちの群像劇。本当ならいろんな要素を放り込んで、2時間くらいに仕上げるところを、悠々たるタッチなのに、40分強にして見せる。子どもたちのそれぞれの事情をちゃんと描きな . . . 本文を読む
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いちびり一家『ポラーノ 夜風にわすれて』

2018-02-15 20:57:40 | 演劇
  姉と妹。死んでしまった妹を待ち続ける姉のところへ妹は帰ってくる。『銀河鉄道の夜』のカンパネルラのように。そこから始まる、ポラーノの広場への果てしない旅。   行方不明になった姉を捜し求める妹と、彼女が引き連れてくる人たち。ツアコンの彼女はいなくなった姉をみんなと一緒に探すことになる。彼らが行こうとしていたのはどこなのか。みんながみんなそれぞれ別々の場所を探し求めている。人がそれぞれ違う人 . . . 本文を読む
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竜崎だいち『夢十夜』

2018-02-14 20:47:28 | 演劇
DIVEの演劇EXPOは昨年も素晴らしいイベントだったが今年もさらに進化した。お祭りでありつつも、それだけにとどまらないのがいい。1本1本がちゃんと本気で作られている。  今回は中心になるウイングフィールドでの2つの企画と、大阪周辺で連日ゲリラ的に開催されるリーディング企画の2本立て。リーディングはよくぞまぁこれだけ、と感心するほど様々な場所でいろんな作品をたくさんの演劇人たちが取り組んでい . . . 本文を読む
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演劇EXPO2018 『あんたの戯曲上演させてくれへん?企画 Aプロ』①

2018-02-14 20:45:57 | 演劇
全国から公募して集めてきた短編戯曲を大阪を拠点とするふたりの演出家が関西圏の役者を集めてA、Bに分け5本を上演するという企画。泉寛介と坂本隆太朗が演出を担当。   まずAプロを見た。2本で1時間半という長さなので、短編と言うより中編だろう。どちらも演出家の個性が前面に出た作品に仕上がっていて、中途半端な企画ものではなく本格的な作品に仕上がっているのがうれしい。   最初は坂本演出による『非 . . . 本文を読む
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『デトロイト』

2018-02-09 23:04:21 | 映画
  キャスリン・ビグローの新作なので見た。『ブルースチ-ル』以降、彼女の映画はすべてリアルタイムで見ている。初期の作品も好きだし、アカデミー賞に輝いた『ハート・ロッカー』も素晴らしかった。最近作の『ゼロ・ダーク・サーティ』も緊張感のあるいい映画だった。   だが、今回は悪くはないけど、少ししんどかった。もちろんそれは内容のせいでもある。力作であることに異論はない。だが、彼女らしさがあまり感じ . . . 本文を読む
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1,2月の新作DVDを5本

2018-02-09 23:03:05 | 映画
1,2月の新作DVDを5本 『新感染』が見たかったので、レンタルしたが、同時にあと4本映画を借りなくてはならない(新作5本で1000円のサービスを利用)ので、仕方なく選んだ4本の簡単な感想。もちろんいずれも見たかった映画で、最新リリース娯楽映画なのだけど。(時間がないから、体力が要るアート系映画は避けた)   『ベイビードライバー』 こういう娯楽活劇が楽しい。特別凄い映画ではないけど、見て . . . 本文を読む
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小川糸『キラキラ共和国』

2018-02-09 22:59:16 | その他
  『ツバキ文具店』の続編がこんなタイトルであることに驚く。最初は気付かなかった。噂で続編が出たことを知り、探したらこのタイトルを見つけて、でも、そんなはずはなかろう、と最初は思った。でも、確かにこれでいい。これがあのお話の続きだ。   鳩子ちゃんが結婚してからのお話である。だから最初から彼女はとても幸せそうだ。読んでいる僕もうれしい。前作は少しずつ彼女が幸せに気付いていくという話だった。そ . . . 本文を読む
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大島真寿美『空に牡丹』

2018-02-09 22:56:17 | その他
  打ち上げ花火に魅せられて、花火のように生きた男の生涯を描く。明治の御代に生を受け、大地主の家の次男坊として育ち、でも、母親が後妻だから家督を継ぐわけでもなく、それを残念に思うこともなく、まるで何も考えないように生きた男のお話。みんなから馬鹿者呼ばわりされ、でも花火が好きだから花火にうつつを抜かす。やがては持っていた家屋敷も失う。   彼はその50年ほどの人生を花火のように生きたのだろう。 . . . 本文を読む
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『スリー・ビルボード』

2018-02-03 19:32:09 | 映画
  なんで2月1日なんていう封切り日なんだ。しかも、どうして事前に全く宣伝もなく、公開されるのだ。劇場で公開前に一切チラシを見なかったぞ。しかも単館ではなく東宝系で公開である。   いろんな意味で謎が謎を呼ぶ映画で、きっと一瞬で公開が終わるかもしれない。もちろん、そんなことより、簡単なあらすじをたまたまキネマ旬報で見た時から気になっていたからタイトルだけは覚えていた。ほとんど、何の予備知識も . . . 本文を読む
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『花筐/ HANAGATAMI』

2018-02-03 19:29:22 | 映画
  ようやく見ることが出来た。スクリーンを見つめる2時間49分はあっという間の出来事だった。大林宜彦監督が心血注いで作り上げた執念の1作である。襟を正して見た。だから、少し疲れた。ずっと音楽が鳴りっぱなしの映画で、テンポも速いし、全編加工処理された映像は目に優しくない。だけど、見ずにはいられない。40年前に作るはずだった映画だ。それを40年の歳月を経てようやく実現させたのだから。   今でも . . . 本文を読む
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うんなま『search and destroy』

2018-02-02 21:30:40 | 演劇
  「うんこなまず」という、あり得ないような強烈なインパクトを持つ劇団名を今回、改名した。そうすることで、彼らの過激さが影を潜めることになったなら、イヤだな、と心配したのだけど、そんなこと要らぬお節介とばかりに、繁澤邦明は変わることないマイペースで90分を駆け抜ける。難しいことを考えるのではなく、バカバカしいまでに単純に笑いながら見ていればいい。その先に答えがあるかもしれない。ないかも、しれない . . . 本文を読む
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レトルト内閣『エピメテウスの眼鏡』

2018-02-02 21:20:35 | 演劇
  こんなにもストレートでわかりやすい芝居なんてめったにないだろう。ふつうどこかで無意識にでも捻りを入れてしまうのが作家の常だ。三名刺繍だって、普段ならこんな作劇はしない。彼女は無邪気を装うのではなく、信じる。だから可能な芝居なのだろう。こんなことをすると、普通なら嘘くさくなったり、バカバカしいものになりかねない。だが、そうはならないのだ。   Ho―Me―I―Ku音楽劇と銘打たれた本作は、 . . . 本文を読む
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