全国から公募して集めてきた短編戯曲を大阪を拠点とするふたりの演出家が関西圏の役者を集めてA、Bに分け5本を上演するという企画。泉寛介と坂本隆太朗が演出を担当。
まずAプロを見た。2本で1時間半という長さなので、短編と言うより中編だろう。どちらも演出家の個性が前面に出た作品に仕上がっていて、中途半端な企画ものではなく本格的な作品に仕上がっているのがうれしい。
最初は坂本演出による『非公式な恋人』。坂本さんらしい過激さがちゃんと前面に出ていて、それが作品の演出として上手く嵌まっていたのがいい。狭い空間に顔をくっつけ合って喋る5人の男女。なぜかの白塗りも効果的だ。そのわざとらしさが、異常なお話にマッチした。2040年、22年振りで目覚めた男の困惑。浦島太郎状態であるだけではない。世界から男がいなくなっていたのだ。東京が女性専用車両状態で、女性専用都市となった世界でのサバイバルが描かれる。この設定だけで長編作品になるのだが、惜しげもなく、このアイデアを40分の作品に仕立てた。壮大なお話を狭い枠の中に収める演出が効果的だ。5人は常に正面を向いたまま。中央に主人公の男(演じるのは女性)を挟み込んで4人の女たちが語る物語の世界に引き込まれる。台本の破天荒な面白さ。そこにもたれ掛からないで、さらりと見せていくのがいい。
終演後の作者と演出家のトークショーもよかった。おまけのアフタートークはつまらないものが多くてあまり好きではないけど、今回は別格。わざわざ大阪まで来てくれた作者に見た感想を聞きながら演出家が創作の秘密を披露するというパターンなので、聞いている僕らも結構ドキドキする。今回は「非公式な恋人」の作者、綾門優季と、本日は上演させてない『空に落ちた男』の大岡淳がゲスト。普通は上演された作品の作者だろ、と思うけど、諸般の事情でこういうことになった(のだろう)。大岡さんが面白かった。歯に衣を着せずどんどんしゃべっていく。しかも、毒舌ではなく、的を射ている。遠慮はない。彼にリードされた本音トークになるのが、よかった。若い綾門さんの話もいい。司会の泉さんのリードがうまかったのかもしれない。(もちろん、基本、何もしないし、出来ない坂本さんも)