会話劇からさらなる進化を遂げた烏丸ストロークロック最新作。いつものように地方で短編を作りそれを長編にするというのは同じだけど、音楽と言葉のコラボで、ストーリーよりも感覚的なものを優先する。5、7調のリズムのセリフもそうだし、ラストの山伏のシーンが圧巻。高い山に登り、山の神になる。1本のストーリーではなく、いくつものイメージをつないでいく。あわい(間)を大事にしたということらしい。決して . . . 本文を読む
前半の東京での描写がいい。あそこで暮らすとあんなふうになるのだろうな、と思う。大都会はひとりには寂しい。大阪で暮らしていると、そこまでは感じないことが、きっと東京でなら感じさせられる、そんな気がする。娘が東京で暮らしているから、最近、時々向こうに行くけど、そのたびに感じさせられるのだ。東京の町を歩いていると、孤独が身に沁みる。
3・11のシーンから始まる。ひとりぼっちの女(長澤まさみ . . . 本文を読む
4話からなる短編連作だ。公園を舞台とする。甘い小説だけど、この甘さは嫌いではない。春の風、夏の陽射し、秋の落ち葉、冬の寒さ。四季を舞台にして、4つの公園の4つの風景が4人の主人公たちの人生に局面を鮮やかに描き出す。ここからもう一度始めよう、と思う。そんな彼ら、彼女たちの姿を公園が包み込む。それぞれの場所が印象的に描かれるのもいい。一度行ってみたい、と思った。彼らと同じ場所を歩いてみたい、そ . . . 本文を読む
こんなところに住んで、この小説の4人の主人公たちと同じように、ひとり静かに暮らしたいと思った。もちろん、今の自分が、ではなく、彼らよりもずっと若い頃の自分が、である。本を読んでまわりにいてくれるほんの少しの人たちと穏やかに暮らす。別に何もなくていい。ただ、平穏に時を過ごす。そんな暮らしに憧れた。石坂洋次郎の小説が好きで、あそこに出てくる人たちのように何もないけれどささやかな幸せに包まれて、何 . . . 本文を読む
ジョン・ウーが初心に戻って派手なアクション映画を作る。もうこんなにもワクワクドキドキすることはない。しかも、あの『追捕』である。お話を中国に置き換えたのではなく、大阪を舞台にしたというのも、期待をそそられた。
だけど、映画はスカスカのお話と、異常な日本が描かれるとんでもない映画で、ついていけない駄作。もともとのお話自体があり得ない。70年代から80年代にかけて一世を風靡した西村寿行の . . . 本文を読む
近年こんなにも硬派の芝居を見たことがない。だから驚いた。作り手の本気が熱い。もちろん気持ちだけではなく、がっちり作られた芝居である。正攻法で攻めてくる。2時間半の大作で、容赦ない。重い芝居だ。1本調子で、途中、少し中だるみするところも確かにある。しかし、最初から最後までギリギリのところで緊張感が持続する。
終盤、公園の遊具の話からラストまでは圧巻である、この話が遠い昔の遠い場所の話で . . . 本文を読む