大好きなクラシック音楽、本、美味しいお店、旅行などの記録です。
休日はソファの上でリラックス!
西炯子「姉の結婚 八」
「3月のライオン」と並んで新刊を楽しみにしていた西炯子(にしけいこ)の「姉の結婚」、第8巻で最終巻となりました。
前作の「娚の一生」の続編にあたるようなアラフォー女性の恋愛物語。都会で不倫に溺れて傷付いた主人公が故郷に帰ってくる。もう恋なんてしないと思っていたのに、魅力的な男性が現れて・・・。舞台を仮想鹿児島から仮想長崎に移して、穏やかな田舎の空気感・街並み、素朴な人間達の中で、傷心が少しずつ癒されていく。
ベースとなる設定は似ていても「姉の結婚」は前作の健全な倫理感から一歩踏み込んで、ドロドロの人間関係に突入するのかと前半ドキドキしました。しかし、途中からは恋から少し距離を置いて、地道な努力が報われだした専門分野、地元への貢献などに自分の居場所を見つけるようになる。
あれ?どうなるんだろうと読み進めましたが、意外とさっぱりとフィナーレとなりました。若干、期待がすかされた印象は残りましたが、主役級のキャラの強さに地方都市特有の緩さが相俟って楽しめました。
最後は少し回りくどい感じもしましたが、さわやかなハッピーエンドでおしまいです。
西炯子の作品には成年女性(?)を主役に据えるものと可愛らしい少女を物語の主人公とするものがありますが、私はさすがに少女系には付いていけないので、これからも成年女子ものを手掛けてほしいです。次作を楽しみにしています。
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「3月のライオン おさらい読本 初級編」(羽海野チカ)
新刊を楽しみにしている羽海野チカの「3月のライオン」。普段この手のファンブックは購入しないのですが、作者が体調不良で暫く休んでいると読んでいたので、第10巻は当分先だろうと心の渇望を癒すために手に取りました。
「3月のライオン」は大好きという割には、実は内容をほとんど覚えていなくて、ひなたがいじめと闘ったエピソードくらいしか印象に残っていません。つまり、9巻まできましたが、これまでは登場人物の紹介程度で、本筋はこれからなんだと思います。前作の「ハチミツとクローバー」は10巻でしたが、一体、どこまで続くのか。想像もできません。
で、このファンブックですが、登場人物の深掘りや名シーンの回顧も楽しめましたが、印象的だったのは羽海野チカの作品にかける思い、人物像です。特に印象に残った3つです。
一つ目は、担当友田氏と将棋監修の先崎九段の対談で、第4巻での将棋シーンを描くために元となった郷田九段と三浦九段のJTシリーズでの対戦の棋譜を羽海野チカと友田氏で50回近く並べたとありました。
二つ目は、3人の男性漫画家が羽海野チカを語るというコーナー。「羽海野先生に会って、一番ビビったのは、“リアルはぐちゃん”だなってことだったね。多分、はぐちゃんって羽海野先生自身のことだったんだよ、きっと。」
三つ目は、羽海野チカ先生Q&Aで、零くんやひなちゃんと同じ年代だった頃、どんな人だったかの質問に対して、「内気すぎて人と話せず、ひたすら毎日図書館に通い本を読み、ひたすら毎日絵を描いて、どうやったら自分のような人間が、大人になっても生きていくことができるのかを必死に毎日考えていました。」
並大抵の努力でないことは想像していましたが、遥かに上です。文字どおり全身全霊でよい作品を生み出すことに集中している姿勢に感動しました。
影響を受けやすい私は、来週の会社同僚との飲み会の場所を‘聖地’である月島にしてしまいました。もんじゃではなく、焼肉ですが、流れ次第では、紹介されている「もんじゃ太郎」に行ってみようと思います。
ところで、この本のアマゾンのカスタマーレビューをみると、上から5人とも、アイドルのグラビア不要、これさえなければよかったのにとありました。SKEの松井玲奈なのですが、このグラビアでのインタビューで、羽海野チカのファンと答えて(控えめに書かれて)いますが、以前、「ぴあ」に掲載されたインタビューで、Q「無人島に一冊だけ家にあるマンガを持っていくとしたら?」A「ハチミツとクローバーの最終巻。」と回答していて、松井玲奈は羽海野チカの大ファンなのです。
漫画雑誌の巻頭グラビアでのAKBグループだらけにうんざりされている方も多いと思いますが、この本での起用は、そういうことからなのだと思います。
調べたら羽海野チカは復帰して連載を再開していて第10巻は来月末に発売予定です。9巻まで読み返して備えようと思います。
〔備忘録〕
楽しみにしている新作の年内の発売予定です。
10/23(木) 「黄昏流星群」48巻
10/30(木) 「百合子のひとりめし」
11/10(月) 「姉の結婚」8巻(最終巻)
11/28(金) 「3月のライオン」10巻
12/ 3(水) AC/DC「ロックオアバスト」
12/17(水) 「孤独のグルメ シーズン4」DVD
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ホイチョイ・プロダクションズ「気まぐれコンセプト クロニクル」
ビッグコミック・スピリッツに連載されていたホイチョイプロダクションズの「気まぐれコンセプト」をまとめたものです。発売された2007年に購入していたのですが分厚すぎて中断していたのを思い出して、今度は970ページ一気読みです。面白かった。
1984年から2006年までの23年間、「はじめに」にもありますが、バブル前夜、バブル絶頂、バブル崩壊、不況、ネットの普及した現代へと流行りや遊びの世相を反映した4コママンガのクロニクルです。広告代理店とヨイショ先の自動車会社の宣伝部を中心とした登場人物の軽薄さ、馬鹿らしさをこれでもかとノリノリに描いていて最高です。
私にとっても、高校生の頃から中年になり二人目の子供が生まれるまでの20数年間、同時代で経験したり、周りから眺めていた世の中です。
マンガの再録だけでなく、毎ページには当時の解説があり、スキー人口が1000万人消えた(私もそのうちの一人です)とか、データの裏付けが成程と思わせます。
バブル時代の解説などもあり、関連で少し調べてみたのですが、1980年の公定歩合は9%、バブルのきっかけとなったプラザ合意の1985年でも5%です。それを当時は“超低金利政策”といわれた2.5%に据え置いたのがバブルが膨らんだ要因です。2.5%が超低金利だなんて今では信じられないことです。
マンガの一つに元祖水槽(水族館)バーの1990年オープンの六本木「ディープブルー」を取り上げたものがあり、解説に「店も水槽も現存しています。」とありました。まだやっているのかと懐かしくて会社の同僚と2次会で行ってみました。
防衛庁(今は東京ミッドタウン)前の出光のガソリンスタンドを左に入ったエリアです。このあたりは、お洒落なストリップショーの店など怪しいスポットがいくつかあり、たまに遊んでいました。ストリップは日本人だけだとやらしくなるのですが、白人の客も結構いて、チップのお札を口に挟んで寝転がり、するとストリッパーが胸で札を顔と一緒に挟んで取るなんてことをやっていて、ワーワー歓声上げながら盛り上がっていました。ドンブリ勘定だったのがバブル崩壊後はシビアに金を取るようになり、行かなくなって、店も自然と消滅しました。
久しぶりのディープブルーは2008年に3度目のリニューアルをしたそうですが、水槽も小さくて地味で昔とは随分違いました。こういう店は自分のためではなくて同行者を驚かすために行くところなのでこれだと次回はないです。お客もいなくて寂しい感じです。因みに、1次会はすぐそばにある小樽で入れなかった「北とうがらし」というジンギスカン屋だったのですが、こちらは滅茶苦茶美味かったです。こんな美味いラム肉を食べたのははじめてです。それでも客は我々以外にいなかったので飲食店の不況は深刻です。
いろいろと懐かしく思い出されるマンガ集でした。この「気まぐれコンセプト」もスピリッツに現存していました。ホイチョイ最新作の「新女子高生株塾」も読みましたが、こちらも楽しくタメになりました。
わが日本、デフレを脱却して本当の好景気を迎えることは果たしてあるのでしょうか。
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西炯子「姉の結婚 三」
前作の「娚の一生」でキュン死した読者の一人です。今や新刊が一番待ち遠しいマンガである西炯子「姉の結婚」の第3巻が発売されました。
40オンナの切なさとそれでも愛にのめり込む愛欲の疼きが描かれます。苦悩しつつも本能にしたがって流されていく。何度も傷ついたけどそれでも偶然の出会いを運命と信じたい。
ドロドロの展開へと設定完了、半年後の次巻を早く読みたいです。
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浅尾いにお「おやすみプンプン 10」
新刊を待っているマンガは今10作品近くあると思いますが、その中でも特に気になるマンガのひとつである「おやすみプンプン」です。伏線が多すぎて一時理解不能に陥りましたが、以前、既出の9巻をまとめ読みしてようやく流れをつかめました。
面白いです。ここに描かれているストーリー、内容を要約することは難しいというか意味がありません。言葉にできないのでマンガという手法で表現しています。それが成功するかどうか、成功しそうな予感です。
虚栄心、孤独感、意思疎通の断絶、期待、ノスタルジー、愛情、欲情、利己心、狂気、運命、板挟みの閉塞感、無常観などなどテーマは複雑。思い通りにいかない人生の切なさに共感できます。まだ謎の多い内容ですが心がザワザワして深みを感じる第10巻でした。
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羽海野チカ「3月のライオン 7」
マンガが続きますが、楽しみにしている将棋漫画の新刊が続けて発売されました。羽海野チカの「3月のライオン」第7巻と南Q太「ひらけ駒!」第5巻です。
面白かったのですが、どちらも本筋の新たな展開への繋ぎだったので(それでも3月のライオンは重かったですが)、次が期待でしょうか。
実際の将棋界は、3月のライオンの決闘を終えて、春、4月は名人戦です。絶不調の森内名人と対する絶好調の羽生挑戦者、羽生さんの勝ちを予想しない人はいないでしょう。森内名人がどれだけ意地を見せるのか。しかも、羽生二冠は最近、矢倉を多用して勝っている印象です。ただでさえ矢倉の多い名人戦での6八銀は確実。矢倉を観れる名人戦は幸せです。4月10日が待ち遠しい。
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西炯子「娚の一生」①~③
「ブルータス」のマンガ特集号で知った作品です。これは嵌りました。雑誌では最新作の「姉の結婚」が紹介されていたのですが、併せて推薦されていた前作の「娚(おとこ)の一生」全3冊です。
東京でのハードな会社生活と不倫に疲れ果てて、祖母の住む鹿児島の実家に帰省した三十代半ばのつぐみ。祖母の死後は一人静かに生活するつもりが祖母の昔の教え子という中年の大学教授・海江田が離れに住みついていて・・・。故郷の田舎の家で感じるリラックスした雰囲気を疑似体験しながら読み進めました。懐かしい故郷との繋がりという点ではリリー・フランキーの東京タワーを思い出しました。海江田の砕けた関西弁のリズムがよくて、つぐみと一緒になって少しずつ心を開いていきます。
最近の草食系に慣れた男の設定では珍しい(?)押しの強さ、それを受けたい女の願望についての解説は、ブルータスでの湯山玲子という作家の文章が見事でそれを読んでくださいということに尽きます。私は女心は分かりませんが、「海江田の攻めにアラフォー女子読者総キュン死。」という解説が笑えます。それでもこのマンガを読めば納得できます。
もう当分結構なはずの愛をそれでも受け入れてしまう女の性に共感と憧れを抱くのでしょうか。このどっぷりと浸かる幸福感は、マンガでは「ハチミツとクローバー」以来かもしれません。
次作の「姉の結婚」(今のところ2巻まで)は更に年齢が進んでアラフォー主人公とイケメン元同級生の物語。設定は似通っているのですが、湯山玲子氏解説のとおりどう展開させるのか作者も迷っているのではという感じです。さて、どうなるのか。こちらも楽しみです。
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谷口ジロー「ふらり。」
「孤独のグルメ」の作者である谷口ジローによる江戸散歩物語です。日本地図を作成した伊能忠敬らしき人物を主人公にしています。江戸の街中を歩いて見て感じたことを淡々と描いたものです。江戸の街並みも美しいです。
特別なことは何も起こらないのですが、日常のちょっとした変化を楽しむ静かだけど味わい深い世界があります。孤独のグルメ同様に何ともいえない渋みのある漫画です。
ブルータスの特集号の推薦漫画はかなりの質の高さでした。追加で数シリーズをアマゾンに注文していましました。
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坂戸佐兵衛/旅井とり「めしばな刑事タチバナ」①~④
これはB級グルメの好き嫌い、こだわり、思い出をこれでもかと語る漫画です。一応、主人公の立花刑事を始めとした刑事モノの設定はあるのですが、それは殆んど関係なく、立花刑事、警察署の上司、同僚や容疑者がひたすらB級グルメについてウンチクを傾けるというものです。
牛丼(吉野家、松屋、すき家、牛丼太郎、東京チカラめし)、インスタントラーメン(サッポロ一番、チャルメラ、出前一丁)、立ち食いそば(富士そば、小諸そば)、カップ焼きそば(UFO、ベヤング、一平ちゃん)、天下一品、餃子の王将などメジャーな食べ物から、少しマイナーなメニュー、ローカルフードまで立花が博識を披露し、その中で一番好きなのはこれだと断定、それに対してライバルの上司や容疑者が反論したりといった展開になっています。
漫画としては単純で絵も上手くないですが、B級グルメの店やメニューや過去のレアアイテムなどへの滅茶苦茶細かいこだわりを大袈裟に披露するのが面白いです。おそらく多くの読者は私が好きなのはコレですと立花に同意あるいは反論しながら読んでいるのだと思います。
B級漫画ですが、こういうのも楽しいです。
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渡辺ペコ「にこたま」①~③
この漫画も面白いです。交際9年、同棲5年をむかえたあっちゃんとコーヘー。このまま平凡だけど幸せな毎日が続くと思っていたところ・・・ちょっとしたことから歯車が狂い出します。浮気、妊娠、シングルマザー、手術、結婚など深刻なテーマが繰り広げられる。
表面上はこれまでと変わらぬ毎日なのですが、起こってしまった事実が少しずつ重くのしかかってきます。どうすればいいのか。受け止めるのが難しい現実にモヤモヤ感が募り、戸惑い、困惑します。お互いのことを知り尽くしていたつもりが心がすれ違っていく。こういう時に相手にどう接したらいいのか迷い、相手の気持ちをさぐります。何とかなるのか、それとももう地獄にいるのか。
爽やかな青春漫画風なのですが、結構怖いです。二人は一体どうなっていくのでしょうか。こちらも続きが待ち遠しいです。
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はるな檸檬「ZUCCA×ZUCA ヅッカヅカ」①~②
これはブルータスで紹介された漫画ではなくて、「主に泣いています」の東村アキコについて検索した際に知った作品です。はるな檸檬は東村アキコの下でアシスタントをしていた弟子で、「あんたの飛び道具は宝塚しかない。宝塚をネタにしたエッセイ漫画を描いてみろ!」(巻末漫画より)とのコメントから誕生した漫画のようです。
ヅカヲタ(宝塚を熱狂的に愛するファン)の生態を面白おかしく4コマ~8コマくらいにまとめた短編漫画を集めています。私も宝塚を知ったばかりで独特のファンの世界のことはよく知りませんが、対象は何にせよ嵌った人のおかしな行動というのは何となく分かるので笑えます。ヲタといえば最近はAKBヲタが有名であちらは総選挙の投票券のために同じCDを何百枚も購入したりとちょっと笑えないところがありますが、この漫画のヅカヲタはまだ許容範囲です。
嵌るのは幸せなことでもあるので、大変だなと少し呆れる一方で読後感は爽やかです。第2巻の後半になると引き合いに出される男役・娘役のスターが現役で私も知っている名前が多くなるので同時代、現在進行系のワクワク感もあります。蒼乃夕妃の見事な太ももをオペラグラスでガン見するという話しがあるのですが、残念ながら私は見れそうにありません。
この漫画も続編が楽しみです(同名のサイトで新作を公開中)。
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東村アキコ「主に泣いてます」①~⑤
雑誌「ブルータス」に「マンガが好きで好きでたまらない。」という特集号がありました。この手の漫画の紹介特集号では過去の作品も含めて幅広く推薦されることが多いのですが、昔の名作にまで手を広げる時間がありません。この特集号では連載中の話題作が中心だったので(漫画は新しい作品の方が好みに合うことが多いです)、それならと気になった作品をまとめて読んでみました。
・東村アキコ「主に泣いています」
・谷口ジロー「ふらり。」
・渡辺ペコ「にこたま」
・坂戸佐兵衛/旅井とり「めしばな刑事タチバナ」
・はるな檸檬「ZUCCA×ZUCA ヅッカヅカ」
5冊を並べて、それぞれの一話ずつを順繰りに読んでいきます。どれも予想以上に面白い漫画だったので、充実のお楽しみタイムです。
その中でも東村アキコの「主に泣いています」が面白かったです。あまりの美しさに出会った男達を魅了し狂わせ破滅にまで追い込んでいく泉さん。そんな自分の境遇に失望し、変装して、世間の目から逃れるように生きています。泉さんのリアルな純愛と取り巻くキャラクターのナンセンスなギャグの連発。ベースはコメディなのですが、しっとりしたシーンに主人公達と一緒に心奪われたり、聖域なしの辛辣な風刺に笑えたりと飽きさせません。昭和、平成と幅広い時代の有名人の言動、有名漫画のシーンなどが引用され、メッタ切りにされます。作者のギャグセンス大爆発です。
5巻までマンネリもなくとにかく読ませます。来週、第6巻が発売されます。
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宮崎克/吉本浩二 「ブラック・ジャック創作秘話」
これまた「このマンガがすごい!2012」からオトコ編1位のマンガ、実話に基づいた作品です。
作品名から想像するブラック・ジャックという稀有の主人公やこのマンガがどのようなきっかけで誕生したのかの話しではなく、手塚治虫がスランプに陥り、一旦、プロダクションが倒産した後、再生のきっかけとなった「ブラック・ジャック」の誕生とその後の手塚、スタッフ、担当編集者など関係者が時間に追われながらかなりの数の人気連載を綱渡りでなんとか創作していく奮闘記です。
様々なエピソードが紹介される手塚治虫の天才、大らかで真面目なキャラクターにも魅かれますが、休みもなく睡眠時間も削って高水準の作品を作り上げていく凄まじいまでの渾身の努力、それに後の人気作家たちがまだ無名のスタッフとして必死に支えている姿にワクワクします。
このマンガを読んで、自分ももっと努力しなければと発奮したとは何とも単純ですが、それが正直な感想です。
学生の時、スコット・タローの「ハーヴァード・ロー・スクール~わが試練の1年~」という本を読んでぶったまげたことを思い出しました。クラスでそれなりの地位を占めるため、気の遠くなるような膨大な量の勉強に持てる時間の全てを注ぎ込む闘争心に圧倒されました。そこまで勉強するのか、そこまで努力するのであれば成功も当然だ、これは自分には出来ない・・・。オマケとして、約10年後、このタローがベストセラーとなった「推定無罪」の著者スコット・トゥローとして再び登場したときも本当に驚きました。
将来の大物が無名のスタッフで働いている件では、リクルートの江副浩正の自伝的内容の新書でリクルート草創期に立花隆がアルバイトとして働いていたのを読み、凄いなと思ったのを覚えています。カリスマに触発されて、次世代のスターが成長していく風景は素敵です(リクルートの例はちょっと違いますが)。
脱線しましたが、私のような自分で漫画本を買ったことはないけれども、散髪屋や食堂に置いてあった「ブラック・ジャック」を読んでいたファンでも大いに楽しめます。ナンバー1も納得の刺激的な良書です。「うどんの女」もそうでしたが、コンパクトに内容を凝縮した1冊完結のマンガもいいです。
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えすとえむ「うどんの女」
うどんネタが続きますが・・・。「このマンガがすごい!2012」という冊子で紹介されていたオンナ編3位の「うどんの女」が気になりました。しかし、書店では売り切れ、アマゾンも在庫切れ。アマゾンで予約していたところ、増刷されたようでようやく家に届きました。
いやぁ、これは面白い。久しぶりの大傑作。美術大学の学食で働くバツイチ女と草食系大学生との間の・・・以下省略。ロマンチック・コメディというのでしょうか。二人とも妄想を膨らませて膨らませて・・・笑えます。そしてエロチック。結構、ムズムズします。一巻完了も潔い。「えすとえむ」という漫画家(SとM?女性でしょうか)を初めて知りましたが、過去の評判作を2冊、早速注文してしまいました。
そして、影響を受けやすい私は菊名駅内の「しぶそば」へ向かいました。蕎麦屋でうどんはアレですが、流れでカレーうどんです。この店の質の高いそばに比べるとどうしても落ちますが、想像よりはまだ普通のうどんと普通のカレーです。
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大友克洋「AKIRA」(全6冊)
トレッサ横浜に入っているディープなサブカルチャー風書店の「ヴィレッジバンガード」で「我々の原点」、「ここで働きたいのならこれを読んで出直しな」みたいな手書きポップで紹介されていたので読んでみました。大友克洋は何十年も前に「童夢」を読んで感動した覚えがありますが、この「AKIRA」が代表作のようです。
念の為、まず第1巻だけ購入して読み始めましたが、すぐに残りの5冊を近隣の書店やアマゾンで掻き集めることになりました。
ストーリーをうまく説明するのは難しく面倒なので省略します。非常に精緻で緊迫感あふれる作画に魅了されます。前半に提示された謎が少しずつ明らかになっていく展開はこの手の近未来型作品に共通しています。丁寧に読み込んでも結局、壮大な構想をまとめきれなくなって全てが解き明かされるわけでもないのは経験上、何となく分かっているので、深読みはせずにさっさとページを捲ります。上質なCG映画を観ているような楽しさがあります。
鉄雄はどうなってしまったのか、AKIRAとは何者か、この作品はどこに向かうのか。同じようにA4版の大型漫画として売られている「風の谷のナウシカ」とどうしても比較したくなるのですが、物語の深さでは風の谷のナウシカが勝ります。しかし、作画の面ではナウシカにも匹敵する質の高さを誇ります。後半にもう少しプロットの捻り、深さがあれば、この絵も随分生きたと思います。若干の物足りなさはあります。
それでも本来マンガは絵です。マンガでここまで出来ることを示せたのは凄いことです。
1982年にスタートして、最終話は1990年。10年近くこのSFマンガに取り組んで、新しい世界観あるいはマンガの可能性を広げてみせた先駆者としての役割は歴史的です。
いずれにしても手にとってからあっという間です。夢中になるノンストップマンガに出会えました。
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