シノーポリ/フィルハーモニア管「マーラー交響曲第3番」


 マーラーを聴くとその夜、悪夢を見ます。特にストレスが強い状況の時に聴くとかなりの高確率です。これは私だけのことでしょうか。どういう悪夢か内容は特に決まっていないのですが、ああやってしまった系、追い込まれて絶体絶命系などうなされて目が覚めるような夢です。
 マーラーを聴くと悪夢を見るという関連に気付いたのは4~5年前のことだったと思います。マーラーの本質はユダヤ人にしか理解できないのではと漠然と感じていたので、マーラーの曲が日本人である自分の深層心理にも影響を与えているんだと勝手に理解して妙に嬉しくなったのを覚えています。

 マーラーでは始めは劇的な第1番、第2番、第5番、大地の歌、第9番をよく聴きました。その後、第6番そして今回取り上げる第3番をよく聴くようになったのだと思います。

 マーラーの交響曲第3番は、大自然、地球、宇宙から天国まで時空を超えた壮大なスケールで描かれています。演奏者のスケールでは多人数を要する第8番が大規模な曲となるのでしょうが、楽想のスケールの大きさでは第3番が屈指の楽曲だと思います。複雑な楽想ですが、おどろおどろしい重さ(これがマーラーの良さでもありますが)はなく、第1番に似た爽やかさがあります。100分近くと長いですが楽しく聴き通すことができます。
 サロネン盤のライナーノーツに、第3番は第2番同様に、ソリストと合唱団を必要とするが、100分近い曲の中で合唱団は4分しか登場しないからプロの演奏家にお金を払って開催するコンサートとしてはあまりにも勿体ない。これまで第2番ほど演奏されなかったのは、曲の人気よりもこの興行師泣かせの構成にあると書いてあり成る程と思いました。

 好きなディスクはシノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団、アルトはハンナ・シュヴァルツによる演奏です。
 ただ、6~7種類しか聴いていないので、絶対のお薦めというものではありません。あくまで好みのディスクです。マーラー演奏ならほとんどよいバーンスタイン盤も他の名盤のような説得力はないように思えます。
 どこまで抉るか、どこからがやり過ぎとなるのかは個人の感覚、好みですが、全体的にシノーポリの演奏はとてもマーラー第3番の作風に合っていると思います。第5番ともどもシノーポリのマーラー演奏の中では好きなディスクです。


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