マイルス・デイビス「サムシン・エルス」


 まだまだマイルスが続いています。中山康樹氏の本に書いてあるとおり、これらはジャズを超越したマイルス・デイビスという音楽です。まだ表面的に音と雰囲気を楽しんでいる段階ですが、少しずつ細かいフレーズとかトランペット以外のサックス、ピアノ、ドラム、ベースの演奏の魅力も分かってきました。本当に痺れます。

 追加で聴いたディスクです。

・「ワーキン」(1956年)
・「スティーミン」(1956年)
・「クッキン」(1956年)
・「マイルストーンズ」(1958年)
・「サムシン・エルス」(1958年)
・「ポーギーとベス」(1958年)
・「ジャズ・アット・プラザ」(1958年)
・「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」(1961年)
・「ジャック・ジョンソン」(1970年)
・「ライブ・イビル」(1970年)
・「ダーク・メイガス」(1974年)

 どれも素晴らしい出来でそれぞれにマイルスの魅力、才能爆発、スリルのある作品です。
 その中で写真の「サムシン・エルス」は、まだオーソドックスなジャズ時代の演奏です。クールで落ち着きがありカッコいいです。まだジャズをよく知らなかった時代に聞きたいと思っていたのはこういうジャズでした。ファンの間でも愛聴盤として挙げられることの多い作品なんだそうです。5曲入っていてどれも凄いですが、特に1曲目の「枯葉」でのただならぬ雰囲気とムードは最高です。
 クレジットのトップにアルト・サックスのキャノンボール・アダレイとありますがこれは契約の関係でこうなったそうで実質的なトップはマイルス・デイビスです。


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内田光子「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第30・31・32番」


 正直言って、内田光子はあまり好きではありませんでした。というよりいつも同じくモーツァルトやシューベルトを得意としているピリスと比べてしまい、少し違うなあという印象を持っていました。深み、味わいのある内田の音楽より、歌があり自然な流れのピリスの音楽のほうが好みでした。

 ピリスは以前、ベートーヴェンのソナタが3曲入っているディスクを出しましたが、こちらは表面的なメロディの美しさだけでピンとこなかったのを覚えています。
 先日、渋谷の音楽ショップでこのディスクを見つけて試聴してみました。ベートーヴェンというより30番、31番、32番であることに興味を持ちました。この曲をどう演奏するかはとても関心があります。意外といっては失礼ですが、とても耳にしっくりくる演奏だったので購入しました。

 家に帰って聴き直してみましたが素晴らしい演奏です。粒の揃った美しい音にこれぞベートーヴェンといえる静かな情熱も感じられます。もう少し陰りのある音の印象がありましたが、内田光子のピアノってこういう音だったかなあと思いながら聴いていました。
 後期ピアノソナタはメロディより音の響きが重要だと思います。早いスピードの演奏は全く合いません。落ち着きのあるゆったりとした演奏でこそ曲の魅力が生きます。
 これまで30番・31番はギレリス、32番はグルダのライブ演奏を愛聴してきました。内田の演奏はギレリスの演奏に近いものです。ただ、31番の第3楽章や32番の第2楽章後半での静かな音楽を聴いていると精神的な音楽というより、冬の日に美しい湖畔を散策しているような情景も浮かんできてこの曲の持つ多様性を改めて感じました。


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