「王府」(日吉)

          

 久しぶりに「王府(わんふー)」で肉チャーハンです。今日は大盛りにしてみました(700円)。ご飯の上に載せられた脂ぎった豚肉の細切り炒めがとてもいいアクセントになっています(ただ、今日の豚肉の脂のノリは若干イマイチだったような)。それでも日吉で一皿ならこの肉チャーハン、私のキング・オブ・チャーハンです。


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「新明解 国語辞典 第四版」(主幹 山田忠雄)

          


 改めて紹介するまでもありませんが面白すぎる辞書、新解さんです。


 辞書の説明文といえば無味乾燥な固いものが普通ですがこれはちょっと違います。主幹である山田忠雄さんの個性的な表現、引用に溢れています。社会への批判精神・正義感、冷徹な人間観察力、庶民的で深遠な哲学。愛情・恋愛には思い入れ激しく(男尊女卑ととられても仕方ない面もある)、たまに激しく心昂ぶります。食糧難の時代を生き抜き、そして白身魚・貝類が好物。我々情けない小市民、サラリーマンを時に厳しく叱り、時に優しく見守ってくれる。そんな人間らしい山田さんが大好きです。

 「新解さんの謎」といった本も出されて、「恋愛」や「動物園」など有名な語句はいろんなところで紹介されていますが、備忘録も兼ねて個人的に面白かった表現を整理します。

 それぞれの語句の説明は実際には多くの文章でなされていますが、ここでは(辞書としては)特におかしく感じる表記をピックアップします。

 それにしてもバラエティに富んだ例文は、しみじみしたり、その通りと納得したり、どきどきしたり、一体何が起こってるんだと驚いたり、笑えます。


〔2010.11.22/2011.6.17一部追加〕

<あ行>

【暴く】  人が静かにしておこうと思うものを、ことさら人目に触れるようにする。ことに、人が有意的に隠そうとしている悪徳・非行や、ともすれば多くの人が見逃しがちな構造的な欠陥などを、遠慮なく衆の前に摘出する。

【暴れん坊】  青春のはけ口を男性的な活発な行動に求め、時には世人のひんしゅくを買いかねない人。

【甘鯛】  肉はうまい。

【家】  そこで寝起きし、仕事から解放された時にはリラックスする所。

【家出】  帰らないつもりで自分の家をそっと出て、どこかへ行ってしまうこと。

【生きる】  自分や家族が飢えないように、うまくやっていく。

【一気】  「従来の辞典ではどうしてもピッタリの訳語を見つけられなかった難解な語も、この辞典で一気解決」

【一国】  (一国の首相たる者)たとえ、その器量でなくとも、現実に総理大臣として大臣を統率する人。

【田舎】  (田舎者)都会の事情に暗い人。エチケットを知らない趣味の低い人。

【犬】  主人や主家の家族によく懐き、時に生命を保護してくれたりする意味では有用だが、牛馬に比べてからだも小さく生産性が少ないと見られたり人目をはばからず交尾したりする所から「役に立たない」「恥を知らない」という意を表す。

【芋】  いなか臭く垢抜けしない。

【陰茎】  男子の生殖器の一部で、さおのように伸びたりする部分。

【受ける】  「ミーちゃんハーちゃんに受けるタレント教授」

【嘘】  (嘘をつけ!)嘘をつくならついてみろ、お前のつく嘘の限界などは当方にはすっかり分かっているのだぞ、という意味で相手の言い分をとがめる表現。

【うっとり】  「時間が彫り上げたような見事な体格に、和香子はうっとり目を細めた」

【運賃】  「一年のうちに三回も運賃を上げる厚顔と大衆無視は幾ら責めても責めすぎることは有るまい」

【送り】  (送り狼)山中などで、人のあとをつけねらうオオカミの意から女性を送っていくふりをして悪さをする男。

【御涙】  「御涙程度の減税」

【女】  一人前に成熟した女性(やさしい心根や優柔不断や決断力の乏しさがからまり存する一方で、強い粘りと包容力を持つ)。


<か行>

【飼い殺し】  今まで飼っていた動物を、老いぼれて役に立たなくなった後も見捨てずに、飼っておくこと(広義では、使用人についても言う。また転じて、物質的な意味でのめんどうは見るが、その人の才能を十分に発揮する機会を与えずに、一生を送らせる意にも用いられる)。

【快男子】  思った事を遠慮無く言ったりやってのけたりする、さっぱりした気性の男。

【火炎】  (火炎瓶)ガラス瓶にガソリン(石油)を入れ、投げつけると発火するようにしたもの。

【輝く】  「ユーフォーなどの話をすると目が輝く」

【合体】  「性交」の、この辞書でのえんきょく表現。

【かねない】  「ぼくは子供がそういう本〔=漫画本〕を読むことに対して少しも心配はしていない。読みたければいくらでも読むがいいと思っている。そんな本のために一生を誤る子供なら、そんな本を読まなくともやはり一生を誤りかねないだろうし、一人前の人間になるやつだったら、そんな本を読んだってのちのさわりにはなるまい。」

【燻る】  「まだ平で燻っている」

【芸術】  (芸術家)芸人と違って芸術作品を創作し、芸術活動をする人。

【けろりと】  「薬剤師は『だれかに間違って渡したみたいで・・・』とけろりと言ってのけました。」

【号泣】  (ふだんは泣かない大の男が)天にも届けとばかりに悲しみ泣くこと。

【好人物】  俗に、人がいいのだけが取り柄で、ものの役に立たない人の意にも用いられる。

【こそこそ】  「運動会や遠足を欠席してこそこそ勉強し、試験のとき一点でも多くとりたいという浅ましさ」


<さ行>

【さお】  ペニスのえんきょく表現。

【常識】  (常識家)ひらめきを有しない人や、冒険をしない平凡な人の意にも用いられる。

【小人】  誘惑にすぐ負けて初志を見失いがちであったり、初めから人生に大きな目的を持ち合わせていなかったりする人。

【職人】  (職人かたぎ)妙におしゃべり(無口)であったり態度が時にがさつであったりするが、自分の技能には絶対の自信を持つ職人共通の傾向。

【尻】  (女の尻を追いまわす)女につきまとって、愛を強要する。

【吸う】  「乳房を吸う」

【素泊り】  泊まるだけで、食事をしないこと。

【ストリップ】  女芸人が踊りながら、衣装を一枚ずつ脱ぎ捨て、バタフライを取った瞬間演技を終える扇情的な芸。

【凡て】  「悲しいことに社会常識の欠けた若造には凡て吸収できなかった」

【聖職】  広義では、教師・牧師など、単なる労働者・サラリーマン以上の奉仕が期待される職業をも指す。

【俗人】  ①高遠な理想を持たず、すべての人を金持と貧乏人、知名な人とそうでない人に分け、自分はなんとかして前者になりたいと、そればかりを人生の目標にして暮らす(努力する)人。②天下国家の問題、人生いかに生きるべきかということに関心が無く、人のうわさや異性の話ばかりする人。


<た行>

【鯛】  マダイは味がよく、めでたい時に使う。

【妥協】  狭義では、相手の権力などに屈して、いいかげんな所で自分の主張をごまかすことを指す。

【楽しい】  「狭いながらも楽しいわが家」「同じやるなら楽しい仕事がいいな」

【旅】  自宅を離れて、ある期間ほかの土地で不自由に(のんびりと)暮らすこと。

【度度】  「自治体のヤミ給与は、これまでも度度問題となった」

【たま】  「たまにやって来るかと思えば、また金の無心かね」

【足りる】  「五千円あれば一週間は何とか足りる」

【垂れ流し】  倫理観の不足のために工場が汚水や廃液を、排出すべきでない所へ排出して、周囲に迷惑をかける意にも用いられる。

【チアガール】  そろいのはでな服装をし、踊りながらポンポンを振って応援をする女の子のグループ。

【恥部】  陰部の別称。広義では、出来るなら他人、特に外人などに見せたくない、社会構造上の裏面を指す。

【茶漬け】  冷や飯を食べる時や酒を飲んだあとやおかず無しで急いでかき込む時などに、飯に熱い茶をかけること(たもの)。

【ちょいちょい】  「クジラの肉で最高なのは、何といっても『尾身』だが、さすがにこれを知っている人は東京にもちょいちょい(時折)いらっしゃる」

【つくづく】  「『これが平和というものか』とつくづく思ったのは、遠足でみんなの弁当を知った時だった」「A新聞は子供のころから我が家の愛読紙だったが十数年前つくづく(=ある事情がきっかけとなって、すっかり)いやになって、取るのをやめた」

【手締め】  シャンシャンシャン、シャンシャンシャン、シャンシャンシャン、シャンと聞こえるように調子を取る。

【テレビ】  「テレビは日本語を乱す元凶である(宇野信夫)」

【動物】  (動物園)捕らえて来た動物を、人工的環境と規則的な給餌とにより野生から遊離し、動く標本として都人士に見せる、啓蒙を兼ねた娯楽施設。

【どうも】  「魚は好きだが、チーズはどうもというお年寄り」

【どうやら】  「親子四人がどうやら暮らしていける収入」「歩兵はどうやら(=どうもがいても)未来永劫にわたって実に『歩兵』以外の何者であることもできないらしい」

【都会】  文化的・娯楽的施設に富み、消費生活に適する条件を備えている、大きな都市。

【読書】  寝ころがって漫画本を見たり、電車の中で週刊誌を読んだりすることは、勝義の読書には含まれない。

【年】  (年は争えない)まだまだ若い者に負けぬと力んでも、肉体的な衰えがどこかにあることは否定出来ない。

【年増】  娘盛りを大分過ぎ、女盛りにある婦人の称。江戸時代は二十代の後半、昭和に入ってからは三十代の後半を指した。

【土台】  「どだい僕は原稿料を収入と考えたことがない」

【特記】  「特記すべき事無し(=時に観察力の貧弱な証とされる)」

【とっく】  「外国ならとっくに政権交代の憂き目を見ているだろうに…」

【とにかく】  「フランス人はそれをバカンスと呼び、イギリス人はホリデーと呼ぶ。とにかく二週間あるいはそれ以上にわたって、休みをとるのである。」

【飛び出す】  「だれにも分からない理由で突然その社を飛び出した」

【溝鼠】  主人の目をかすめて悪事を働く使用人。

【ともかく】  「神は人間が持つ最大の弱点が盗みにあると知り、それを人間に知らしめるために禁じたのではなかったか。ともかく盗みこそは人間の犯す根源的な悪であり、それを示すことで神は自分の存在を強く示すことができた」

【捕らえる】  「犯人を捕らえてみれば、我が子なり」

【取り巻く】  自分の将来にとって有利になりそうな人と始終接近して、機嫌をとる。

【努力】  ある目的を達成するために、途中で休んだり、なまけたりせず、持てる能力のすべてを傾けてすること。

【取り分け】  「女性上位時代などというが、ヨーロッパとりわけゲルマン系の家庭における家父長は、しゃんとしているようにみえるのだ」


<な行>

【尚更】  「サラリーマン生活は尚更いやだ(考えるだけでもぞっとする)」

【何気無い】  「生活はかなり苦しかったらしいが、何気無いさまを装っていた」

【何も】  「明後日か明々後日キット返しに行くからって、鈴木に会ったらそう云って置いてくれ給え。何も初めっから返さない積りじゃないんだから…」

【なまじ】  「なまじ女の子が柔道など習ってもしようがない」

【なんだ】  (なんだな)「おれたちはなんだな、お互いまあ成功した方だな」

【逃げる】  「刑務所から逃げる」

【にやり】  (にやりスト)いつもにやにやしている人の俗称。

【人情】  同情・感謝・報恩・献身の気持のほかに、同じことなら少しでも楽をしたい、よい方を選びたい、よい物を見聞きしたい、十分に報いられたいという欲望など。

【妬む】  他人の幸運・長所をうらやんで、幸福な生活のじゃまをしたく思う。

【ねばねば】  「ねばねばした暑熱と、たえまない靴音と、汗ばむ倦怠にひたって、すれちがうイタリア娘の腰と足を鑑賞していると…」

【能】  「寝る以外に能の無い男」

【農家】  「テレビ・マイカーをほとんどの農家が備えている」

【ノースモーキング】  「たばこを吸うな」ということ。

【のに】  「女だてらに、よせばいいのに」

【乗る】  「国語辞典に日常語ののって(=収録して)いないのには驚く」


<は行>

【はいはい】  「はいはい、やればいいんでしょう」

【馬鹿】  記憶力・理解力の鈍さが常識を超える様子。また、そうとしか言いようの無い人。人をののしる時に最も普通に使うが、公の席で使うと刺激が強過ぎることが有る。また、身近な存在に対して親しみを込めて使うことも有る。

【薄利多売】  一個当たりのもうけを少なくして、値段を安くすることで多量に売りさばき、売り手も順当にもうけた上で「あの店は安い」という信用を取ろうという商法。

【禿げ上がる】  禿げて、髪の毛の生えぎわがずっと頭の上の方まで行く。

【化ける】  俗に、男性の目から見て、女性が化粧して、別人のようにきれいになることや、一般に別人のように見せかける意にも用いられる。

【ハスキー】  声がしゃがれて、よくひびかない様子(魅力的と感じる向きも有る)。

【初恋】  少年少女時代・(青年初期)の、うたかたと消えた恋。

【ビキニ】  乳の部分と下腹部とをそれぞれ申しわけ程度におおっただけの、セパレーツ型の女性の水着。

【卑屈】  自己の能力を信じる気力に欠け、必要以上に他にへつらうなどして、いじけている様子。

【一通り】  「校長は一通りおれの説明を聞いた」「授業は一通りすんだが、まだ帰れない」

【羊】  (羊飼い)朝、羊を小屋から出して草を食べさせに野原に連れ出し、夕方小屋に帰すことを職業とする人。

【必要】  (必要悪)会社にとっての総会屋。

【平目】  白身で、美味。

【風刺】  社会制度に見られる構造的な欠陥や、高官の言動にうかがわれる人間性のいやらしさなどを、直接非難する形はとらず、やんわりと大所高所から批評すること。

【ブックメーカー】  金もうけのために安っぽい本をやたらに書く人。

【ふとした】  「楽しい新婚生活も束の間、姫君はふとした病いがもとではかなく世を去ります」

【踏み台】  希望達成のために利用したあとは、捨てて顧みないものの意にも用いられる。

【ブラボー】  万歳!うまいぞ!すてきだ!

【振り掛け】  それを掛ければ、おかずなしでも御飯が食べられるように考案した加工食品。

【ぷりぷり】  「その場は、おっかさんの取りなしで、やっとおさまったが、おとっつぁんは、なおぷりぷりしていた」

【ふるちん】  男が陰部に何もおおわない状態。古くは「ふりまら」。

【文化】  「捕鯨は一つの文化であって他国からとやかく言われる筋合のものではない」

【文学】  「人生いかに生くべきか」という主テーマが読者の想像力と読解力と豊かな感性により自ら感得されることをねらいとするもの。

【屁】  腸にたまったガスが、しりの穴から出たもの。

【べき】  「これは子供が見るべきテレビじゃない」

【べたべた】  「フランス語は世界中で一番綺麗な言葉だというけれど、あたしあのアクセントべたべたしていて嫌いなの」

【屁ひり虫】  広義では、よくおならをする人の意にも用いられる。

【勉強】  そうする事に抵抗を感じながらも、当面の学業や仕事などに身を入れる意。

【勃起】  狭義では、合体を思い、陰茎が伸びて堅くなることを指す。

【欲する】  「収入の多からんと欲する者は来たれ」

【凡人】  自らを高める努力を怠ったり功名心を持ち合わせなかったりして、他に対する影響力が皆無のまま一生を終える人。マイホーム主義から脱することの出来ない大多数の庶民の意にも用いられる。


<ま行>

【まず】  「ワトスン、つねにまず人の手を見ることだよ。それから、上着のそで口とか、ズボンのひざ、そして、靴だ」「ワトスン。きみのすきな、こぢんまりまとまった物語にするのは、まずむりだろうな」

【まだまだ】  「まだまだ男尊女卑の遺習が根強い日本では…」

【むっちり】  「イナゴは軽快で、香ばしく、肉にむっちりしたところもあって、いいオヤツになるのだった」


<や行>

【喧しい】  「やかましく言うと、ちかごろの大学教師の半数は落第だ」

【由来】  「だが、由来役人というものは、保身の術にたけているものだ。どんな窮地に追いこまれても、責任を転嫁して、自分の位置の安全を守ることだけは巧みにやってのける」

【善かれ】  (善かれ悪しかれ)「出世しなくてもいい、善良な人間にしたいとか、正直な人間にしたいとか、金持ちにしたいとか、あるいは有名な人間にしたいとか、善かれ悪しかれそういう具体的なイメージがどうやら今の母親にはないようである」


<ら行>

【立派】  (立派におなりだね)人間的に成長し、また前と違って社会的地位を得るようになったことへの感嘆の言葉。

【リップ】  (リップサービス)主として政治家が、口先だけでうまいことを言うこと。

【流行】  (流行歌)その時どきの一般大衆の生活感情を反映しているというので、多くの人に愛好される歌謡曲。

【恋愛】  特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。

【ロマンス】  自分もあやかりたいくらいな、清純で理想的な恋愛。


<わ行>

【枝れる】  「東北線と奥羽線は福島で枝れるが、終着駅は青森だ」


<ん>

【んだ】  「んだ、んだ、おめえの言う通りにまちがいねえ」




 ご覧のとおり現代の感覚からは若干ステレオタイプ、見方に偏りがあるように取られるところもあり(これでも選んだ方で自粛した語句も複数あります)、第五版で表現がかなり変更、おとなしくなり、第六版では笑える表記はほとんど消えたそうです。
 この第四版はそれなりの問題を抱えながらも、社会・人間の真実を捉えた表現にハッとするところがあり、山田さんからの正しく生きろという直言、叱咤激励と受け止めたいと思います。

 この辞書は手放せません。




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