ビル・エヴァンズ「ワルツ・フォー・デビイ(完全版)」




 スピーカーをB&Wに代えてから日課がワルツ・フォー・デビイの完全版のどこかを聴くことになりました。
 この完全版は名盤の誉高い「ワルツ・フォー・デビイ」と「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」を産んだ1961年6月25日のライブをほぼそのまままとめた企画盤です。アフタヌーンの2セットとイブニングの3セットが3枚のCDに収められています。

 マイルズ・デイビスが好きな方はお分かりのようにこの手の人気のライブ盤の完全版は冗長なことが多く、いい演奏がぎゅっと詰まったオリジナルをやっぱり聴く、完全版は何処かに片付けてしまうことばかりですが、これだけは違います。

 全ての演奏が絶品で間延びするところなんてありません。
 しかも、このアルバムはSHM-CDという高音質ディスクであるだけでなく、リマスターの関係なのかよく分からないのですが、オリジナルはピアノの音が前に出るのに比較して、スコット・ラファロのベースの音がかなり前に、ピアノより少し前に出てきて、ピアノと溶け合うように響きます。ベースソロの振動に痺れます。

 CD1枚目、アフタヌーンセット1の1曲目「グロリアズ・ステップ」の1分7秒のところでキュッと音が3秒ほど消えます。これは店の停電の影響だそうです(録音機材の電気が落ちた)。冒頭にこういうキズがあるので、このアルバムが大いに推奨されることはないのかもしれませんが、このグロリアズ・ステップの中盤から後半にかけてのスコット・ラファロのベースの響きは陶酔の世界の始まりです。そして不思議の国のアリス、マイフーリッシュハート、オールオブユーと続きます。
 今の私にはマイフーリッシュハートは1曲目ではなく3曲目です(おそらくオリジナルの2枚はもう聴かないと思います)。

 イブニングセットも絶好調。どの曲もお約束のように長いベースソロが入り、まるでスコット・ラファロがリーダーのようです。
 ラファロはこの11日後に交通事故で25歳の若さで急逝します。
 
 仕事が終わって帰宅して風呂上がりにビールを飲みながら、ビル・エヴァンスのピアノから始まって、後半のスコット・ラファロのベースに酔いしれる。

 この2ヵ月間に収集した多くのジャズの名盤を少しずつ聴き直して楽しんでいるのですが、棚を眺めてもまずはこの完全版を手に取ってしまいます。




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