吉田満「戦艦大和ノ最期」

               

昭和20年3月29日、世界最大の不沈戦艦と誇った「大和」は、必敗の作戦へと呉軍港を出港した。吉田満は前年東大法科を繰り上げ卒業、海軍少尉、副電測士として「大和」に乗り組んでいた。「徳之島ノ北西洋上、「大和」轟沈シテ巨体四裂ス 今ナオ埋没スル三千ノ骸 彼ラ終焉ノ胸中果シテ如何」戦後半世紀、いよいよ光芒を放つ名作の「決定稿」。
  〔出版社の解説文〕

僅か160ページの記録ですが評する言葉も難しい感動の戦記です。余りにも有名な戦艦大和ですが昭和20年4月にこんなことが起きていたとは初めて知りました。これは日本人として読んでおくべき記録です。

読んだキッカケは「日本辺境論」という新書、最近のベストセラーです。途中から理解できなくなって読み止めたのですが、日本人の本質の紹介の中で見慣れない文語体で戦艦大和の搭乗士官の言葉が引用されていました。その数行に感動、どうしても原著にあたりたくなりました。


 「進歩ノナイ者ハ決シテ勝タナイ 負ケテ目ザメルコトガ最上ノ道ダ 日本ハ進歩ト
  イウコトヲ軽ンジ過ギタ 私的ナ潔癖ヤ徳義ニコダワッテ、本当ノ進歩ヲ忘レテイタ
  敗レテ目覚メル、ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ワレルカ 今目覚メズシテイツ救ワレ
  ルカ 俺タチハソノ先導ニナルノダ 日本ノ新生ニサキガケテ散ル マサニ本望ジャ
  ナイカ」


昭和20年、敗戦濃厚、当時日本が誇る巨艦大和の搭乗員3千人強、おそらく沖縄への出撃を控え、死を避けられぬことは全員承知。米軍の偵察機が定期的に上空を飛び相手に位置を知られていることも承知。これだけの大艦隊なのに飛行機を一機でも失うのが惜しくて護衛の飛行機全機帰還、帯同なし。必死。出撃を控えた夜に酒が振る舞われ、艦員泥酔します。
しかし、本土の連合司令長官から正式に伝達された作戦内容に艦員驚愕。アメリカが上陸した沖縄で航空機による特攻を遂行するにあたり、命中確率を少しでも上げる手助けとして囮となるために出陣する、燃料片道分、帰還なき海上特攻。

死を覚悟していた士官達から、死は怖くない、国のために死ぬ、ただ、こんな犬死じゃ余りにも無意味じゃないかとの反論が噴出します。これに対して、上記の臼淵大尉の言葉が発せられます。血気盛んな若手の放言を抑える臼淵大尉、この時21歳です。
極限状態だから許されたのでしょうか、幹部批判が公にされているのも意外なことでした。


 「真ニ帝国海軍力ヲコノ一戦ニ結集セントスルナラバ、ナニ故ニ豊田長官ミズカラ日吉
  ノ防空壕ヲ捨テテ陣頭指揮ヲトラザルヤ」


中盤続く、死を覚悟した戦士の妻や恋人や家族への言葉、思いが切ないです。


 「俺ハ死ヌカライイ 死ヌ者ハ仕合セダ 俺ハイイ ダガアイツハドウスルノカ 
  アイツハドウシタラ仕合セニナッテクレルノカ」


グラマンの猛攻、大和沈没、海上での回遊、生還までの描写は壮絶、無比。是非、手に取って一読いただきたいです。魚雷を受けて左への傾斜が避けられなくなった艦体を立て直すためにまだ数百名が残る右舷下層部に水を注入する、沈没後救助にあたる駆逐艦への搭乗者が限界に達し、助けてくれと伸ばす手首を日本刀でバッサバッサと切り捨てる・・・今生の地獄絵。戦争の現実、悲惨さがリアルに表されています。読み物としては滅茶苦茶に面白いので文語体はほとんど気になりません。想像を絶する事実は文語でしか表現できなかったのも肯けます。

こんなに凄い書き物なのにこれまで読むべしと推薦してある記述に出会いませんでした。どうしてなんでしょか。ここで引用した文言はホンの一部です。是非是非原書に触れて感じていただきたいです。これを読まずして死ねません。
僅か数日の出来事を淡々と描写した記録ですが、戦争を知らない我々が戦争とは何かを理解できる稀有の書き物です。




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「カラヤン ベルリンフィル ライヴ・イン・東京1977」

          

 カラヤンとベルリンフィル絶頂期のベートーベンチクルス、1977年東京ライブという触れ込みの5枚のディスクです。録音もよく最高!というコメントもネット上で多く見られたので買う気満々でHMV横浜へ向かいました。

 ただ、一応気持ちを落ち着けて、念の為、試聴してから・・・いくつかの楽章を聴いてみたのですが、若干質を落としてある試聴コーナーのオーディオ・ヘッドフォンからは期待したような圧倒的な音質が聞き取れません。あれ、おかしいな、これはもしかしたら過剰な宣伝を仕組んだのかなあと思いながら購入中止をほとんど決めかけていたところ、第6番「田園」の4楽章「雷雨・嵐」を選択して暫く・・・ティンパニの一発「ダン!」でハッとしました、33年前の会場の聴衆は心臓が止まりそうになったのではないでしょうか。これは凄い、買いです。
 とりあえず当初予定どおり「1番・3番」、「4番・7番」、「5番・6番」の3枚を購入しました。

 この10日間くらい、何度か繰り返し聴いているのですが、結論からいうとどれも素晴らしい演奏、録音です。
 やはりティンパニが凄いです。来日公演では2・4・7・8番をテーリヒェンという名手、1・3・5・6・9番をこちらも名手フォーグラーが受け持ったのだそうです。このディスクほどティンパニの存在を意識したのは初めてです。
 次はトランペットの咆哮、そして固いところですがオーボエ、フルート、クラリネットの芳醇な音色、弦の重低音、とにかく豪華です。激しく圧倒的、そしてうっとりするように優しい。ベルリンフィルの響き、カラヤンの統率は凄いです。

 これだけの演奏なのに絶対的ディスクと確信を持てずに何度も聴き直したのは、カラヤンの解釈というか指揮、音楽作りが表面的な音の迫力に聞き惚れてしまいすぐには理解できなかったからです。
 年代にも寄りますが後になればなるほどカラヤンのベートーヴェンにはスマートすぎる、洗練されすぎているような線の細さがありました。激しさは十分なのですがブラームス1番の時のようなスケールの大きさがない。
 それがこのライブでは剛毅な強さがあります。特に3番「英雄」、4番、7番、5番、6番も1番も全てですね。第7番の冒頭でオーボエが一小節早く入るというミスもあったりといずれにしてもドキドキのライブです。
 必ずしもベートーヴェンが最高ではなかったカラヤンとしては間違いなく最高のベートーヴェンだと思います。




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「謝甜記 貮号店」(中華街)

          

 中華街繋がりでお粥で有名な「謝甜記(しゃてんき)」に行ってきました。「海員閣」、「山東」などと並んで中華街で最近の行列といえばココの店でしょうか。本店は10時からで二号店なら朝8時半からなのでこちらです。

 結構な行列かと思いきや、10分前到着で私が一番客です。それでも開店後に次々とお客が入ってきました。

 メニューは迷いましたが中華粥としては人気が高いという「牛肚粥(もつかゆ)」(780円)にしました。





          

 副菜は初めからテーブルに並べてあります。5分くらいで大きな椀に盛られたお粥が運ばれてきます。

 早速いただくと・・・おいしいです。おいしいですが、普通です。あれ?こんなに普通のお粥なんでしょうか。これまで食べたことのある味の沁みた旨い中華粥というより、ホテル・旅館の朝バイキングで供される味付け控えめのシンプルなお粥に近いです。「安記」の凋落が激しく中華街の粥では一人勝ちの状態と読んだのですが・・・これくらいなら家庭でも作れるような。
 粥の中に隠れているモツをたまにタレに付けて食べるのがいいアクセントになります。しかし、うーん。

 普通においしいので店が近所にあればたまに通うかなあ・・・でも、680円、780円だと高いかも、400円~500円くらいが妥当かなと思います。




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「ピエール・エルメ・パリ」(西武渋谷店)

          

 先日、お客様用にマカロンを買ってつまみ食いをしたところ、こんなに旨いものかとびっくりしました。調べると「ピエール・エルメ」のものが最高とのこと。どうせならと一度試してみました。首都圏には青山の本店とデパートに5店、我が家から近いのは西武渋谷です。
 定番は250円、季節限定ものが290円。高いといえば高いのですが、一般的にも200円前後なので世界最高レベル(?)にしては比較安いかもしれません。
 チョコ、ローズ、シトロンに季節もの一品を購入しました。

 どれも濃厚です(むせるくらいです)。甘いもの好きには堪らない。サクッとソフトな生地と繊細なクリームがひんやりと口の中でとろけます。他店のものを多く知らないので比べられませんがこれは美味しいです。小さなお菓子ですが満足感は大きい。個人的には定番にしたいピエール・エルメです。




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「清風楼」(中華街)

          

 中華街にある「清風楼」にシュウマイを食べに行きました。

 見た目は普通のシュウマイ、少し大きめかと思いきや普通のサイズです。一口齧ると・・・肉が凝縮しています。一般的にシュウマイの具に何が使われているのか分かりませんが、余計な材料は入っていない、肉という感じです。うまい。これまでシュウマイを特に美味しいと思ったことはないのですが、さすがに名物、これはいけます。一皿4個(500円)、2人前をペロリといただけました。満足。
 家族にお土産をと考えていましたが、いつか一緒に出来立てを食べた方がいいと思い止めておきました。





          

 支払いをして出て行こうとすると女性スタッフから「もうじき獅子舞来ますけど…」と言われました。10月1日は中国のお祝いの国慶節だったようで音楽に合わせた獅子舞と爆竹が中華街中を練り歩いていました。店主らしき女性からも滅多に見られませんから是非と言われ、店内で待ちました。

 獅子舞は店の前で暫く踊った後、店内に入ってきて、練り歩き、獅子の大きな口がスタッフの頭をガブッとかじる真似事をやっています。私もどうぞと言われたので、獅子舞に食べられる儀式をさせていただきました。何かのご利益があるのだと思います。






          

 獅子舞は店の外に出て、再度踊り、最後に立ち上がって2階の方に何かを示して終了でした。


 日中関係最悪の時期で、演舞者の地元の学生には気の毒でしたが、国と人とは別です。美味しいシュウマイを食べた後に幸運にも伝統行事に接することができました。




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