アンドリュー・ワイエス展
オルソン・ハウスの物語
埼玉県立近代美術館
丸沼芸術の森が所蔵する約200点の水彩・素描によるオルソン・シリーズ
ワイエスは姉クリスティーナと弟アルヴァロが住むオルソン家を30年に亘って描き続けた。 しずかで地味な色彩。だが、 素朴で質実 あるがままの光景が 深くこころに沁みる。
これこそ 「用の美」 をさがすような楽しみであった。 暮らすための道具の美しさに気づく。
Weather Side. 1965 Tempera
オルソン家の納屋の穀物袋やオイルランプ、 ブルーベリーを摘みとるための熊手、 収穫した実を入れるバスケット、 馬を繋ぐための柱、 愛用の椅子、 柄の長い草刈鎌、 雨や雪解け水、湧き水をたいせつに運ぶためのバケツ・・
愛着をもって使い込まれたもののあたたかさ、 画家の繊細で純粋な表現、 その眼はいつもやさしく注がれる。 足が不自由なクリスティーナが家に戻るところ、 家の前のアルヴァロと刈り取り機 オルソン家の台所・・
階段と玄関のドア、 ジャガイモ袋、 トウモロコシをのせた手押し車、 納屋の柵、 雨樋、 薪ストーブ、 納屋のツバメ、 (ブルーベリーの収穫もカモメに食べ尽くされて)見せしめのために捕らえたカモメの案山子。
青い計量器… こびりついた粉、 お碗のように丸くて青い計るための器、 木製の桶と布袋 水彩の色調 ドライブラッシュ、 ざっくりとした布目、刻印の文字、繊維のほつれ、 さまざまな技法、 紙の上に布を再現、 まるで織るように描かれている。 絵を読めばもっと愉しくなる。
絵葉書を買ったが印象にほど遠かった。
海からの風(習作)… テンペラ画を描くまでには 何点もの習作がある。 鉛筆や水彩などで習作として描かれたものは傑作ばかり、 作品になっている。 <Weather Side(さらされた場所)>の習作、 <クリスティーナの世界>習作 (手の位置 傾き) <海からの風>習作など 238点を観た。
手許にあるプレゼントの画集から
Wind form the Sea. 1947 Tempera
どちらも
(FIRST IMPRESSIONS Andrew Wyeth
RICHARD MERYMAN)より
寂寥感ただよう オルソンの家 1969
姉弟は 前年に亡くなっている
-☆-
デューラーの素描「仔兎」、とくに「芝草」を激賞していたというワイエスの絵は、 大地の土の匂いがする、 テラ・ヴェルデ たぶんミルクをたっぷり混ぜた緑黄色やオークルや赤・・・ 繭のような灰色など つぶさに観ていくと色のハーモニーが何ともいえない、 ワクワクする。 引っ掻いたような線、 滲みや、 変化にとむ背景など
ワイエスはヘルガという女性を15年間描きつづけた。 1990年1月ワイエス展 静謐な生命の肖像(セゾン美術館)、 同年秋、ワイエス展 ’ヘルガ’(埼玉県立近代美術館)を鑑賞した。
アルヴァロとクリスティーナの家 1968
深く静かに、 異国の もののあはれが 身にしみた