想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

愛と糸瓜(ヘチマ)の車谷長吉

2010-08-27 00:15:00 | 
「私は愛がどうの糸瓜がどうのと言いたがる女が嫌いである。」
どひゃーん、一発でぶん殴られた気がする書き出しは、車谷長吉。
(文士の魂「愛の小説」新潮社刊)このお方が苦手であります。
苦手というにもいろいろあって、いわゆる好きすぎて苦手という
類いのほうであります。

ときどき愛という字を使うので、どひゃーんと衝撃を受けたけど
言っとくけど、いや、書いとくけど、わたしは「言いたがる女」
ではないよ、そういうの嫌いなタチなんだ、言わないね。
そう、言わないのである。
書いているだけである。言わないから書く、書くから言わない、
そこんとこ、どっちだか自分でもわからないが。いずれにしても
言いたがらない人である。

なぜかって? めんどくさい。それ、口にすればうたかた。
愛がどうの糸瓜がどうのという言い回し、あまりに小気味いい。
いいから読み流しそうだけど、どうして糸瓜なのか?
それを考えてしまった。

ま、それは置いておいて、最初の一行はつまるところ車谷氏に
とって愛とは何かに収斂していくので、車谷氏ほど愛を知る男も
いないといっていい。奥さんの高橋順子さんを大事に思っている
ことが行間からにじみ出ている。いつもそうである。

マジメである。糞がつく真面目なので、そこんとこが苦手で恐くて、
そして好きである。
遠い遠い孤高にそびえる人である。
わたしは真面目でない人が嫌いである。

愛も糸瓜も口には出さない日々、昼間の人の声が頭を離れないので
外を見ると、月明かりがきれいだ。
樹々の影が映る芝生を窓から眺めていたら、外を歩きたくなった。




コメント
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