心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

結婚記念日

2009-11-01 07:07:18 | Weblog
 一昨日の午後、天満橋のジュンク堂で時間潰しをしました。文庫本コーナーをぶらぶらしながら、河出書房新社「須賀敦子全集」第1巻を探しました。店員さんに伺うと在庫なし。重版中であると。しかたなく、第4巻を手にしました。この全集、すべて1冊500から600頁ですから、読む前からプレッシャーを感じますが、本を開くと、きらきら光るような文章がながれています。そのためか冷静に読み進むことができます。
 私の隣で選書に余念のない男性がいました。さりげなく振り返ると、1か月前にお会いしたばかりの某社の会長さんでした。珍しくお一人での選書を楽しんでおられるご様子です。「その節は」「いやあ、君か」ということで、しばし歓談。手にした須賀敦子全集を見つけて、ぱらぱらめくりながら、「須賀敦子って聞いたことがないなぁ」。「いやあ、私も最近読みだしたばかりなんですが、どうも離れられなくなって」。「君らしいね」.....。仕事を離れて読書談義に花が咲きました。
 そのあと、わたしは大阪府庁近辺のビルで開かれた業界主催のお勉強会に出席しました。会議室の大きな窓から大阪城の雄姿を眺めながら、そういえば去年の秋にも、この部屋での会議に出席したことを思い出しました。時間の経つのは早いものです。大阪城という歴史建造物を前に、年齢時計が確実に1歳進んだことを思いました。
 話は変わりますが、昨日、33回目の結婚記念日を迎えました。わたしの心の中にある原風景には未だ古き良き時代が浮かんでくるのに、田舎にいた年の倍にも達する年数を、ひとつの出会いを縁に同じ屋根の下で暮らしたことになります。その間、子供を3人育て、孫が2人。たかだか60年の間に、次代に引き継ぐひとつのお役目は終わったような、そんな気がしてなりません。
 つかず離れず。これが長く一緒に暮らしている間に形成された我が家の不文律のようです。お互いに好きなことをしながら人生を楽しむ。陶芸、お花、手芸、ボランティアと多彩な活動、最近ではフラワーアレンジメントの先生役までやりだした家内。それに対して、どちらかといえば仕事中心の、わたし。お互い何となく充実しているような、そんな思いがあります。
 でも、還暦という言葉が他人事ではなくなってきたことを実感しだすと、時々あと何年ぐらい生きられのだろうかと考えることもあります。いっそ、最後の10年くらいは誰からも束縛されず、二人で自由奔放に生きたい。先日、豪華客船世界一周旅行1千万円という新聞広告が話題になりました。リタイアしたら何もあくせくすることはないのだから、案外楽しいかも。でも、お決まりコースというのはどうも。気に入った国でコース離脱という選択肢がないと、わたしたちの性格からして持たないような気もする。ああでもない、こうでもないと話しながら、お互いに死期というものを頭の片隅に抱き始めていることを思ったものです。
 さてさて、昨日から長男の孫娘が帰ってきています。1歳です。昨年の暮れ、甲府の武田神社でお宮参りをして、はや1年。その後、5月の連休に帰ってきましたから、孫にとっては2回目の帰省となります。久しぶりに我が家に束の間の騒々しさが戻ってきました。彼は彼なりに仕事に揉まれ、家庭を愛し、頑張って生きている。そんな長男の姿を、父親としては嬉しく眺めました。きょうのお天気は午後から荒れ模様になるとか。急ぎ、午前中に、孫を連れて京都知恩院にお参りです。

※最後の力を振り絞って咲くコスモスの花に、いのち幾ばくかの蝶がとまっています。秋の終わりを感じさせる風景を、そっと写真に収めました。
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