心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

「ヴェネツィアの宿」と京都散策

2009-11-08 21:20:56 | Weblog
 昨日は広島出張でした。あさ10時30分からの会議でしたので、夜明け前の出勤で、長い長い1日となりました。そんな週末を終えた今日の日曜日。少しお疲れ気味でしたが、大学時代のOB会に出席しました。
 集合場所は京阪三条駅から地下鉄東西線に乗り換えてふた駅のところにある蹴上駅。少し早く三条駅に着いたので、しばし鴨川の三条河岸に座って時間潰し。読みかけの須賀敦子さんのエッセー「ヴェネツィアの宿」を開きました。水鳥の羽音に気づいてふっと目をあげると、視点の遠近調整がつかないせいか、ぼんやりとフィレンツェの街並みを思い出してしまいました。違うのだけれども、アルノ川の風景を思いました。ここ数日、須賀さんの世界にのめりこんでいるためでしょうか。現実との差異がぼんやりしています。

 母校の創設者のお墓参りから始まったOB会では、なにやら「ヴェネツィアの宿」のなかの「大聖堂まで」に登場するフランスはシャルトルへの巡礼を思い浮かべながら歩きました。蹴上駅から南禅寺の横を通って、哲学の道を横切り、熊野若王子神社を過ぎる。「猪が降りてくるので入口の戸をしめてください」という注意書きのある鉄扉を開けて山に入ります。狭く急な山道を、そう20分ぐらい登ったところに新島襄のお墓はありました。42年前、新入生オリエンテーションでお参りして以来でした。本当の巡礼は、こんな楽なものではないのでしょうが、ふだんあまり使わない筋肉をめいっぱい駆使しての墓参でした。大先輩の中に牧師の方がいらっしゃったので、みんなで讃美歌をうたってお祈りしました。

 先輩のみなさんは健脚揃いです。そのあと御所の横にある新島襄の旧邸に向かいました。徒歩で。旧邸では、新島夫人の八重さんご愛用だったという古いオルガンによる小コンサートが催され、ジョルダーニの「われを信じて」など6曲を聴きました。演奏してくださった方の提案で、最後に全員で校歌を歌っておしまい。そのあと、古い洋風和風建築を眺めながら、今度は「ヴェネツィアの宿」のうち、京都を舞台にした「白い方丈」の風景を想起しました。その余韻は、なにかしら思い出せない音楽の調べとともに、京都御所から大学まで、引きずって歩きました。
 
 大学に到着したのは、もう午後2時を回っていました。神学館3階の教室に三々五々集まった仲間たちと、今度は地下鉄で御池通りまで移動して懇親会場へ。歩き疲れた長い1日は終わりました。帰りの電車のなかで、あとわずかとなった「ヴェネツィアの宿」を読みながら家路につきました。

 そうそう、先日、大学の後輩からいただいたメールに、『Learn To Live and Live To Learn』(生きるために学ぼう、そして学ぶために生きよう)という言葉が添えてありました。今朝、墓参の折、D.W.ラーネッド博士の墓石を見つけました。その墓石に、この言葉がはっきりと刻まれていました。わたしにとって残された年月、この言葉を大事にしていこうと、改めて思いました。実は、その後輩に、きょう、正門前でばったりあってしまいました。現役学生でもある彼女の助言に感謝しています。
 今晩は、アヴェ・マリアのCDを聴きながら、懇親会でちょっぴりお酒の入ったブログ更新でした。さあさあ、明日から1週間、慌ただしい日々が続きます。

【写真説明】
上から1枚目は三条河原から四条方面を望む風景、2枚目は紅葉まじかの哲学の道、3枚目は新島襄のお墓、4枚目は大学の教室から望む30数年前と同じ風景(遠方は京都御所)、5枚目はD.W.ラーネッド博士の墓石です。
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