週末から寒い日が続きますが、旧暦では第三候立春末候「魚上氷」(うおこおりにのぼる=氷の間から魚が動き始める)の季節を迎えました。熱帯魚の水槽を覗くと、プラティの幼魚が二匹三匹と目につきます。でも、限定された環境ですから、寒い季節には親魚が一匹二匹と姿を消します。水槽の世界も新陳代謝が進んでいます。 さて、先週の日曜日は、昼下がりにフェスティバルホールにでかけました。チケットセンターで手続きをすますと、独身生活の気軽さもあって、昼間だと言うのに地階のパブで一杯。昂ぶる気持ちを抑えます。開演20分前に入場すると、なんと職場の同僚の姿も。そう言えば、彼は大学時代グリークラブで活躍した経歴の持ち主でした。
ほぼ満席の中で、ヤクブ・フルシャが指揮するプラハ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏が始まりました。ステレオ機器の性能が向上したとは言え、やはりホールで聴く演奏は違います。聴衆が一斉にステージに釘づけです。
まずは「スメタナの交響詩モルダウ~わが祖国」、ついでミッシャ・マイスキーのチェロでドボルザークのチェロ協奏曲。素晴らしい演奏に拍手が鳴りやまず、マイスキーのアンコールでは、ドボルザークの「森の静けさ」とバッハの無伴奏チェロ組曲の一節が披露されました。
そして最後に、交響曲第9番 ホ短調「新世界より」。小さい頃からよく聴いた定番の曲ですが、それでも新しい感動があります。こちらもアンコールに応えて、スラヴ組曲から2曲が演奏されました。フルシャさんのサービスメッセージ「まいどおおきに」に、大阪のお客も大満足でした。 そんな週の半ば、朝日新聞夕刊の「華麗な人」欄に、舘野泉さんの記事を見つけました。「鍵盤舞う5本の指」の見出しです。2002年、フィンランドでの演奏会で倒れたあと右半身不随になりながらも、その後左手の5本の指で演奏できる曲を演奏しようと「舘野泉 左手の文庫募金」を設立、その募金をもとに作曲を依頼されました。2012年、2013年には全16回にわたって「左手の音楽会」が全国各地で開かれ、私も聴きに行きました。舘野さんのピアノ曲を聴くと、不思議と生きる力をいただきます。
今日は音楽ネタが多いですねえ。最後にもうひとつ。昨日の朝日新聞国際政治面に「イラク 不屈のタクト」と題する記事を見つけました。「演奏続ける国立交響楽団」「”銃より楽器”テロ乗り越え」の小見出しが踊ります。
混乱が続くイラクで、音楽による連帯をめざして活動を続ける国立交響楽団の指揮者カリム・ワスフィさん(42歳)を追った記事でした。テロの脅威を乗り越え、1月に開いた定期演奏会には1千人を超える聴衆が集まったのだと。マーラーの交響曲第1番「巨人」を演奏したとあります。そのワスフィさん、「過激派の青年たちと話せるなら、15分で彼らの銃を楽器に持ち替えさせてみせる」と言います。なんと輝かしい言葉であることか。
先日、プラハ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聴いていた時、ふっと「イスラム国」のことが頭を過ぎりました。彼らに、ほんの一瞬でも我に帰る瞬間があったなら、このホールでシンフォニーを楽しむ心の余裕が持てたならと思いつつ、「新世界」を聴いていました。戦争と平和。混乱と安寧。どんなに過酷な環境に置かれても、熱い心をもって語る人がいます。見習いたいものです。
今日は、久しぶりに舘野泉さんのCDから「シャコンヌ 演奏活動50周年最新録音」を聴きながらのブログ更新でした。奥様も東京からお帰りになり、我が家も久しぶりに普通の生活に戻りました。